日本保険薬局協会会長 中村勝
制度依存型の保険薬局は、国の財政問題と超高齢化社会などとの関連性が強く、調剤報酬は改定のたびに厳しくなることが予想されます。このため保険薬局の経営者は、今後の変化を予測した経営ビジョンを絶えずブラッシュアップし、経営に望む必要があります。さらに、保険薬局、薬剤師の存在意義が問われていることも重要課題として認識しなければなりません。国民からその存在を認められ支持されるためには、自己改革が必要です。
民間団体の日本創生会議や日本経済新聞が発表した「消滅可能性がある都市」一覧は、われわれにも大きなインパクトを与えました。今後は人口減少を見据えた地域社会との共生を視野に、保険薬局が健康ステーションとして地域住民から必要不可欠の存在になるための薬剤師の覚悟が問われます。
国民皆保険制度下の保険薬局は、低コストで高品質の医療サービスを国民に提供するため日々研鑽を積むべきです。医療という相互依存を深める世界だけで議論するのではなく、異業種の方々を巻き込んで新たな医療を作り上げることを考えていかなければなりません。
保険薬局の多くの経営者や薬剤師は、門前薬局を中心とした約20年間にわたる右肩上がりの成長を経験されたため、新しい取り組みに躊躇しがちです。しかし、今後は行政・各諸団体などと連携を取り、医師・看護師・介護関係者とのネットワーク作りが必要です。また、積極的に在宅に取り組み、多くのOTC薬を取り添えて、国民のセルフメディケーションの向上に貢献することが保険薬局に求められています。
われわれは日頃の協会活動を通じ、情報発信に力を入れてきました。今年は、行政・各諸団体とさらに緊密に連携を取り、国民に必要な医療サービスを提供し薬剤師の地位向上に向け多様な情報を発信していく所存です。この考えを実現させる手段として、今夏に「第1回全国ファーマシーフェア2015」を開催する予定です。国民のニーズに沿った薬局機能とは何かを問いかけ、様々な業界から参加を募り、理想とする保険薬局・薬剤師の姿を明確にし、健康情報の発信拠点として、国民に高品質の医療サービスを提供してまいりたいと考えています。
また、これからの保険薬局のキーワードはIT化だと思います。電子化された医療情報は共有化へとつながり、縦割されている各種医療機関に横串を通し、無駄な医療費を削減し、適切な医療を提供できる体制へ導くと考えられます。国が掲げる25年をメドに、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい人生を最後まで続けることができる体制を構築する「地域包括ケアシステム」の実現に向けて、医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供するためには、IT化の促進は重要です。