日本医薬品卸売業連合会専務理事 山田耕蔵

医薬品卸業界の1年を振り返り、2018年を展望したい。紙幅の都合上、偽造薬の流通防止、流通改善、薬価の毎年改定を取り上げるが、18年10月にワシントンでIFPW(国際医薬品卸連盟)の総会が開催され、20年秋には日本で総会が開催される予定であることを付記させていただく。
偽造薬の流通防止
本年1月に発生したC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品流通事案は、医薬品流通の信頼を大きく揺るがせた。
厚生労働省は3月に「偽造薬流通防止検討会」を設置し、偽造薬流通防止に向け積極的に検討を進めた。
6月には中間取りまとめが行われ、これを踏まえ、偽造医薬品の流通防止のために直ちに行うべき事項について所要の措置を講ずるため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」および「薬局等構造設備規則の一部を改正する省令」が10月に公布され、18年1月31日(一部は同年7月31日)から施行することとされた。薬卸連としても、取引記録の保存や取引先の身元確認など、適切な医薬品流通の徹底に万全を期すこととしている。
流通改善
薬卸連は、昨年設置した「新提言等フォローアップタスクフォース」において、単品単価交渉の促進や市場の変化に対応した流通のあり方など、喫緊に改善を要する課題について、本年4月にその対応策を取りまとめた。この対応策を具体化していくため、7月には新たにプロジェクトチームを立ち上げ、積極的な議論を積み重ねている。
そのような状況のもと、11月の中央社会保険医療協議会において、「薬価制度の抜本改革についての案」が示された。
その中には、「平成33年度(21年度)に向けて、安定的な医薬品流通が確保されるよう、国が主導し、単品単価契約、早期妥結、一次売差マイナスの是正等を積極的に推進し、流通改善に取り組む」との文言が盛り込まれ、「流通改善の取り組みを加速するため、まずは医薬品メーカー、卸売業者、医療機関、保険薬局が取り組むべきガイドラインを作成し、遵守を求めていくこととし、当該ガイドラインの趣旨・内容を『未妥結減算制度』に取り入れるなど、診療報酬等における対応を検討する」ことが改革の方向性として示された。
薬卸連としては、11月下旬の中医協の業界意見陳述において、新薬創出等加算品目の適用範囲が大幅に縮小され、長期収載品に新たに厳しいルールが導入されるなどの薬価制度の抜本改革が行われれば、関係者(医薬品メーカー、卸売業者、医療機関、保険薬局)の受ける影響は計り知れないとの大きな懸念を表明すると共に、医薬品の安定供給が確保されるように、関係者の意見を踏まえて医療用医薬品の流通改善の推進に効果的なガイドラインを作成するよう要望した。
今月中旬には「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」が開催され、流通改善のためのガイドラインについて意見交換が行われた。今後、国の主導のもと、ガイドラインが作成され、早ければ来年4月から遵守が求められるという待ったなしの状況を迎えることになる。
薬価の毎年改定
前述の「薬価制度の抜本改革についての案」では、「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、2年に1度の薬価改定の間の年度(薬価改定年度)において、全ての医薬品卸から、大手事業者を含め調査対象を抽出し、全品目の薬価調査を実施することとし、その結果に基づき、薬価を改定する」とされた。いつの間にか、中間年という言い方がなくなり、毎年薬価改定という表現になっているのは大いに気になるところである。
中間年の薬価調査の対象品目の範囲については、「平成33年度(21年度)に向けて、安定的な医薬品流通が確保されるよう、国が主導し、単品単価契約、早期妥結、一次売差マイナスの是正等を積極的に推進し、流通改善に取り組むことにより、薬価調査が適切に実施される環境整備を図りつつ、国民負担の軽減の観点から、できる限り広くすることが適当である」とされた。
ここでは、先ほどの国主導の流通改善が、薬価調査が適切に実施されるための環境整備と位置づけられている。薬卸連としては、昨年末の基本方針(4大臣合意)には「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」と明記されていることから、中間年の薬価改定の範囲は真に価格乖離の大きな品目にとどめ、薬価の毎年全面改定につながらないよう求めていくこととしている。