【生体外でヒト肝細胞を培養】
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東京理科大学発ベンチャーのトランスパレントと感光材大手の東洋合成工業は15日、生体外でヒト肝細胞の培養を可能にした世界初の創薬スクリーニングツール「Cell-able(セルエイブル)」を新発売した。ヒト肝細胞を使った長期の薬物動態・毒性試験を実施することで、候補化合物のスクリーニング期間と新薬開発コストの削減が期待できる。
これまで、新薬開発には薬物動態・毒性評価のための動物実験が避けられず、開発費の高騰要因となるばかりか、動物実験の削減に向かう世界的な動きに対応できていなかった。また動物実験結果のヒトへの外挿に当たっては、種差の問題も大きく、新規化合物のヒトでの挙動を事前に予測するためには、ヒト細胞を用いた試験が必要とされていた。
新たに開発されたセルエイブルは、肝細胞の生存と機能を長期に維持するのに必要な3次元構造を形成することができる培養ツール。「ミニチュア肝臓」ともいえる状態を生体外で実現できるため、生体に近い環境下で薬物動態・毒性評価を可能にしたのが特徴。トランスパレントが開発した共培養技術と、東洋合成工業の感光材技術を用いた特殊なプレート技術を融合することで実現した。
肝細胞の機能と活性を維持したままで、1カ月以上の長期培養が可能となったことで、これまで難しかったより長期の薬物動態・毒性試験が可能になった。また、今回開発されたマルチウェルプレートは、1プレートで最大96種類の化合物評価が可能となるため、候補化合物の薬物動態・毒性、薬効を高速かつ大量に評価でき、スクリーニングの効率化が期待できる。
15日に都内で会見したトランスパレントCEOの佐倉武司氏は、「データの信頼性の高さがセルエイブルを使う最大のメリット」と強調。「巨大な日本の医薬品市場で、スクリーニングツールとしてナンバーワンの地位を獲得したい」と意気込みを語った。
発売初年度の2008年は、売上高1億円を目標とし、来年には海外で販売を開始する予定。12年には30億円の売上を見込む。セルエイブルの価格は、12穴および96穴キット(プレート・培地セット)が税込み20万円。