余剰在庫の大幅減少実現‐半年で約200万円を削減
千葉市内を中心に調剤薬局7店舗を展開するフルヤマ薬局は、戦後間もない1946年に創業し、長年にわたって市民の健康を支えている老舗の調剤チェーンだ。若手に加え、勤続年数の長い薬剤師も多く、処方箋がなくても顔なじみの患者が薬剤師へ気軽に相談に訪れる。一方で、アナログな手法で医薬品の在庫管理を行うなど業務効率の面で課題を抱えており、東邦薬品の薬局本部システム「ミザル」を導入したことで、余剰在庫の大幅な減少を実現させた。昨秋から余剰在庫按分機能を使い始めて、余剰在庫が半年間で約200万円削減できたという。
フルヤマ薬局西千葉店
自動発注システム、3店に試験導入
ミザルを使っている様子
フルヤマ薬局は、薬剤師も含めて従業員約50人が在籍し、処方箋枚数は全店舗合計で月に約7000枚。様々な医療機関の処方箋に対応している。取締役営業統括本部長の岡崎英利氏は、「昔から地域に密着して展開しており、利用者も地域住民が多い。今は調剤がメインだが、OTC医薬品も長年販売してきた。千葉シーワン店では薬局製剤も手がけており、根強いファンも多い。われわれの薬局製剤を目当てに遠方からお越しくださる方もいる」と語る。
老舗として地域医療に貢献している一方で、業務効率の面では課題を抱えており、日々の業務の中で余計な手作業に追われることも多かった。特に医薬品の在庫管理は、紙の在庫表に依存しており、他の店舗の在庫状況を正確に把握できない場合もあった。7店舗でそれぞれ異なった発注システムを用いており、個々の薬剤師の判断で電話発注することで、余剰在庫の増加にもつながった。
マスコットキャラのケンちゃん
こうした状況から、「ミザル」の在庫管理システムを全店舗で導入した。画面一つで、全店舗の在庫状況が把握でき、余剰在庫は処方実績のある店舗に自動で按分する機能を有する。岡崎氏は、「高齢のスタッフも多く、最初はシステムの導入に抵抗があったが、使い始めてみたら手軽に操作でき、ここまで業務が楽になるとは思わなかったとの声が現場から多く上がっている」と手応えを示す。
全店舗が千葉市内にあるため、全体の在庫状況を把握し、在庫のある店舗から少ない店舗にすぐに医薬品を運ぶことができる。余剰在庫を減らすことに成功し、帳簿上での論理在庫と実在庫の差異もほとんど見られなくなった。「在庫管理がしっかりできるようになった。仮に在庫切れになっても、他の店舗からすぐに持ってこられるので、患者さんを長時間待たせることもない。処方箋枚数も導入前より増加したと思っている。従業員の意識も変わり、自ら積極的に在庫を確認するようになった」と話す。
フルヤマ薬局の薬局製剤
システム導入後のアフターサポートにも満足している。「今もメールや電話で分からない点を問い合わせることがあるが、細かい内容でも一つひとつ丁寧に教えていただき、現場でここまで定着してきた。本当に感謝している」と高く評価する。
在庫管理システムに加え、「ミザル」の自動発注システムも3店舗で試験的に導入している。日々送信される処方データに基づき発注を行うシステムで、毎日自動で発注点が変わることで適正な在庫維持を可能にするというものだ。「薬歴の記載も紙で行っているのが現状なので、電子化を進める入口としてミザルを導入してよかったと思っている。可能であれば少しずつアナログからデジタルへシフトしていきたい」との展望を語る。
ケンちゃんエコバック
業務の効率化と並行して、地域住民への情報発信にも力を注いでいる。その一翼を担っているのが、フルヤマ薬局のマスコットキャラクターであるコアラの「ケンちゃん」だ。健康ナビゲータとして、ブログやSNSで健康情報や店舗状況、製品紹介などを発信しているほか、ケンちゃんグッズとして、薬を持ち運ぶのに便利なトートバッグを店頭で販売している。「ケンちゃんは、古山薬局の創業メンバーの1人。これからもケンちゃんの役割は大きい」と岡崎氏。
今後も地域に根ざし、何でも相談できる薬局として、人と人との交流を大事にしていく考えだ。「昔からのファンに支えられ、患者さんからも選ばれている。これからは、周りの医療機関と連携しながら、在宅医療を行うことも検討している」と話す。老舗でありながら、フルヤマ薬局の事業方針は未来志向である。
フルヤマ薬局（東邦薬品）
https://www.tohoyk.co.jp/ja/products/enipharma_series/enif_honbu/
