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米食品医薬品局(FDA)は8月31日、オミクロン株に対応したファイザー社製およびモデルナ社製の2種類の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、ブースター接種として緊急使用許可(EUA)を与えたことを発表した。
このワクチンは、既に使用されているモデルナ社製およびファイザー社製ワクチンを改良したもので、従来株とオミクロン株のBA.4およびBA.5を標的とする2価ワクチンである。BA.5は現在、米国で新規感染例の90%近くを占めている。接種対象年齢は、モデルナ社製ワクチンは18歳以上、ファイザー社製ワクチンは12歳以上であり、プライマリーシリーズの接種または従来のブースター接種から2カ月以上間隔を空けて接種する必要がある。
FDA生物製剤評価研究センター(CBER)のPeter Marks氏は、「ブースター接種用のワクチンにオミクロン株の成分を含めることについて、外部の専門家に意見を求めた。メーカーとの密接な取り組みにより、この改良版ワクチンの開発が安全かつ有効に実施されるよう徹底した。FDAは、毎年のインフルエンザワクチンの株の変更に関して豊富な経験を持っている。それゆえ、今回の承認を裏付けるエビデンスには自信がある」と話す。
FDA長官のRobert Califf氏は、「これから秋に向かって屋内で過ごす時間が増えていく。この改良版ワクチンの接種対象者は、接種を前向きに検討することを強く勧める」と述べている。
FDAの承認を受けた後の流れとしては、米疾病対策センター(CDC)のワクチン諮問委員会が改良版ワクチンの接種対象者について検討し、同委員会が勧告を出せばCDC代表のRochelle Walensky氏が承認することが予想される。
Marks氏は、「この改良版ワクチンは、現時点では、マウスを対象にした実験が実施されただけだが、安全性と有効性を示すデータは十分にある」と話す。この点について、バイデン政権の医療顧問トップであるAnthony Fauci氏は、「動物実験データの使用は毎年のインフルエンザワクチンの更新においても通常行われていることだ」と述べている。Marks氏によると、今回の承認に当たっては、既存のワクチンの広範な実績や、変異株特異的な製剤を用いてヒトを対象に実施された初期の一連の臨床試験の結果もエビデンスとして考慮されているという。なお、モデルナ社では、ヒトを対象とする試験がすでに開始されており、ファイザー社も同様の試験を予定しているという。
Fauci氏は、「国民を守るためにすべきことを、われわれは十分にできていない。われわれは、BA.5流行の真っただ中にいるというのに、目指すべき目標にはほど遠いところにいる」と語る。現状では、保健当局はワクチン接種の必要性について多くの国民を納得させることができていない。その結果、米国では、プライマリーシリーズの接種を受けたのは国民の約3分の2にとどまり、ブースター接種を受けた人はさらに少ない。
ただし、全ての科学者がこの改良版ワクチンのブースター接種を支持しているわけではなく、「従来のワクチンでも重症化予防には強い効果がある」と主張する人もいる。米ワイル・コーネル・メディスンのJohn Moore氏は、「COVID-19による死者は、ワクチン未接種者と健康に大きな問題があった人に集中している」と主張。また、改良版ワクチンのブースター接種を推奨する取り組みを正当化できるだけのデータがそろっているのかという点についても疑問を呈している。一方、米ルイジアナ州立大学のJeremy Kamil氏は、「改良版ワクチンを支持するものの、多くの人はすでに感染によって免疫がついている」と話す。
8月半ばの時点で、連邦政府は改良版ワクチン1億7,000万回分を購入している。CDCはワクチンの提供計画に関する説明の中で、供給量は「十分ではあるが、限りがある」と述べている。(HealthDay News 2022年8月31日)
Source
https://consumer.healthday.com/covid-vaccine-2657984761.html
(参考情報)
More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-fda-authorizes-moderna-pfizer-biontech-bivalent-covid-19-vaccines-use