TOP > HEADLINE NEWS ∨ 

【プロテアソーム形成の仕組み解明】新規抗癌剤開発に期待膨らむ‐東大薬学研究科村田教授らが解析

2009年05月29日 (金)

 東京大学薬学研究科蛋白質代謝学の村田茂穂教授らの研究グループは、細胞内で蛋白質の分解を行う酵素複合体の「プロテアソーム」が形成される仕組みを明らかにした。プロテアソームは、抗癌剤の新たな分子標的として注目されており、既にプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブ(商品名ベルケード)が、多発性骨髄腫の治療薬として、世界で臨床使用されている。村田氏らが明らかにしたのは、プロテアソームの調節ユニットで、プロテアソーム形成に働いている19Sプロテアソームの形成機構。その形成を阻害することができれば、プロテアソームの活性を阻害する治療薬よりも特異性が高く、副作用の少ない薬剤開発につながることが期待されている。

 プロテアソームは、細胞内で不要になった蛋白質を選択的に分解し、除去することで、細胞を健全な状態に保つ役割を果たしている。中でも、ユビキチンで標識された蛋白質を分解する系はユビキチン‐プロテアソームシステムと呼ばれ、細胞周期制御や免疫応答、シグナル伝達といった様々な働きに関わっている。

 その機能亢進や低下が疾患の発症に関係しており、癌細胞ではプロテアソーム機能が亢進している例が多いことが分かってきている。癌との関わりで、特に重要だと考えられているのが転写因子のNF‐κBの活性化で、プロテアソームはNF‐κBに結合して不活化しているIκBαの分解に働いている。NF‐κBはサイトカインや接着分子などの転写を調節して、腫瘍の細胞浸潤や転移、血管新生、アポトーシスの回避などに働いていることから、NF‐κBを活性化するプロテアソームの阻害が、抗癌剤開発のターゲットになっている。

 また、ユビキチンシステムは、細胞周期の各段階でも働いている。具体的には、M期からG1期への移行には、ユビキチンシステムによるサイクリンBの分解が不可欠とされるなど、その制御が癌の増殖抑制につながると見られ、新たな抗癌剤の分子標的として、プロテアソーム形成機構の解明が課題になっていた。

 プロテアソームは、ユビキチンで標識された蛋白質を捕捉し、その構造を解きほぐすことによって分解可能な状態にする19Sプロテアソームと、蛋白質分解を実行する20Sプロテアソームから構成され、完全な機能を持つ26Sプロテアソームとして、生物活性を発揮する。村田氏らが着目したのは、そのうちの19Sプロテアソーム。これまで、プロテアソームの活性を調節する19Sプロテアソームがどのように形成されるのかについては、分かっていなかった。

 そこで、ヒト腎臓癌由来の細胞などを使って調べた結果、19Sプロテアソームの形成には、ガンキリン、p27、S5b、PAAF1の四つの分子が介在することを突き止めた。この四つの分子は、プロテアソームを構成する部品と複合体をつくり、19Sプロテアソームが完成するまでエスコートする分子シャペロン蛋白質で、それらが消失することによって、26Sプロテアソームの生理活性が失われる。

 中でも、ガンキリンは、元々癌遺伝子として発見された分子で、村田氏らは「ガンキリンなどの阻害剤が開発できれば、プロテアソーム活性を阻害するよりも、癌細胞に対する特異性が高く、副作用の少ない治療が可能になる」としている。



‐AD‐

同じカテゴリーの新着記事

薬剤師 求人・薬剤師 転職・薬剤師 募集はグッピー
HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術