第111回薬剤師国家試験が2月21、22日に実施されます。2022年に改訂された薬学教育モデル・コア・カリキュラムには疾病の予防や個々の患者の状況に適した責任ある薬物療法が実践できる薬剤師の育成を目指すことなどが掲げられています。近年の国試でも、「解剖・生理学」「疾病の予防」など同改訂コアカリに準拠した内容が多く出題されており、「個別最適化薬物治療」については、今年度の本紙でも学修方法を紹介してきました。今号では、薬学ゼミナール全9科目の責任者が第111回国試に向けた「最終チェックポイント」を紹介します。
始めに国試の合格基準をおさらいしましょう。合格基準は、[1]問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること[2]必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること――の要件を全て満たすこと(表1)で、禁忌肢の選択状況も加味されます。

表1 薬剤師国家試験における科目・問題区分別の問題配分
合格ラインは相対基準で決まるため、その年の国試の難易度により変動します。薬ゼミ自己採点システム(登録者数1万人以上)の結果から見えることとして、正答率60%以上の問題の合計数はその年の合格ラインを上回っています(図1)。つまり、多くの受験生が正解できる正答率60%以上の問題をしっかり解くことができれば、国試に合格できるということです。参考正答率の高い既出問題を繰り返し学修して、周辺知識も含めて理解できるようにしましょう。

図1 国試の合格ラインと正答率60%以上の問題の比較

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薬ゼミLINEで既出問題の解説を確認することができますので、活用してください。過去問解説動画(101~110回)にアクセスするには、薬ゼミLINEアカウントにて「110-1」「110 208」のように国試の回数と問番号を入力して送信してください。
9科目の最終チェックポイント
物理
物理の分野は、大きく「物理化学」と「分析化学」に分けられます。この科目で高得点を狙うためには、三つのポイントとして、[1]用語の定義を理解する:過去問等で登場した用語の意味を自分の言葉で説明できるようにしましょう[2]グラフや表を読み解く:提示された図表が何を表しているのか正確に把握し、必要な情報を読み取る力を養いましょう[3]計算力を身につける:問題文から適切な公式を選択できるようにし、解説を参考にしながら自力で解けるようになるまで練習しましょう――を意識した学習が効果的です。
特に出題頻度が高い範囲として、物理化学では▽熱力学▽反応速度論▽分子間相互作用▽放射線と放射能、分析化学では▽酸と塩基▽定性試験▽クロマトグラフィー▽分光分析法▽画像診断技術――が挙げられます。過去問を繰り返し解くことで出題傾向をつかみ、知識の定着を図りましょう。
化学
化学は、分子構造や官能基の性質を基盤に、有機反応や生体分子、医薬品化学へとつながっていく科目です。構造式から性質や反応性を推測し、知識を結びつけて考える力が得点に影響します。化学概論、立体化学、酸・塩基の範囲では、「原理を自ら説明できるか」を学修指標としましょう。
有機反応では、生成物だけを覚えるのではなく、「どの試薬が、どの部位に、なぜ作用するのか」を、電子の動きや立体的要因とあわせて理解し、応用力を身につけましょう。
生体分子(糖・脂質・アミノ酸・核酸など)や医薬品化学では、既出問題で取り上げられた内容を軸に、性質・反応性・作用機序を整理することが効果的です。近年は、化学以外の科目でも構造式をもとにした設問が増えています。総合的な得点力向上のため、化学の学修により得られた知識を横断的に活用できるようにして、国試本番に臨んでください。
生物
生物は、例年出題基準から満遍なく出題されますが、特に薬理、病態・薬物治療、衛生と関連する「解剖・生理学」および「生化学」の出題数が増加傾向にあります。既出問題を繰り返し解き、知識の定着を図ると共に、問題の正誤の確認だけではなく、周辺知識の整理や構造式および図の確認を意識しましょう。
なお、全範囲を通して[1]言葉の意味を理解する[2]関連する医療系科目とセットで学修する(例:抗悪性腫瘍薬を学修する際に生物で核酸代謝を振り返る等)――を意識しましょう。
最後に、生物の得点向上には医療系科目の知識も不可欠ですので、他科目とのバランスも取りながら学修を進めましょう。
衛生
衛生では、次に挙げる出題頻度が高い範囲を必ず見直してください。「保健統計」の死亡原因の推移はグラフ・表での出題が多いため、年次推移の理由を必ず理解しましょう。「予防接種」は予防接種法での分類(A類・B類)、ワクチンの分類(弱毒生・不活化・トキソイド)を確認してください。「感染症」は母子感染、性感染症を特に確認しましょう。
「ビタミン」と「食品添加物」は構造式での出題が多いため、構造式から特徴が分かるようにして覚えましょう。「細菌性食中毒」は原因細菌と原因食品、産生する毒素をまとめましょう。「発がん物質の代謝的活性化」は代謝的活性化の経路を理解しましょう。「水環境」では主要な水道水質試験法の原理、活性汚泥を用いた下水処理の原理を簡潔に説明できる状態を目指しましょう。
薬理
薬理は、例年、出題基準から満遍なく出題されています。そのため、全範囲を満遍なく見直して総仕上げをしましょう。手法としては、既出問題を中心に問題演習を行い、▽誤文の訂正▽文中のキーワードの意味――の説明がしっかりとできているか確認しましょう。また、問題文に登場する薬物名だけを見て、「作用機序と薬理作用」を説明できるか確認することも非常に有効です。何度も間違えてしまう範囲は目印をつけておき、国試本番前に復習できるようにしておくと弱点対策になります。
問題を解く上で重要なことは、問題文中のキーワードをその場で活かせるようにすることです。キーワードを理解できていれば、文章の矛盾に気づくこともできます。そのためには、▽受容体の分類▽標的分子(特に酵素)の機能――に目を向け、生物とリンクさせて理解を深めるように努めていきましょう。
病態・薬物治療
本科目は「病態・薬物治療」と「情報・検定」の範囲から出題されます。
病態・薬物治療では、薬剤師が臨床現場で対応する機会の多い疾患が出題される傾向があるため、▽循環器系▽泌尿器系(腎)▽消化器系▽代謝・内分泌系▽中枢・精神系▽悪性腫瘍――の範囲を中心に他科目との知識を関連付けて学修しましょう。また、近年の実践問題では、複数疾患を合併している患者の症例を読み取り「最も適切な治療は何か」を判断させる問題が増加しています。そのため、既出問題や模擬試験を活用し、患者の症候、検査値等から服用薬の相互作用や副作用の発現を推測する力を強化しましょう。
情報・検定の出題割合は減少傾向にあるものの、医薬品情報源や検定・推定の手法について、既出問題を中心に学修し、理解を深めることが得点するために効果的です。
薬剤
近年の薬剤では、「薬物動態学」で投与計画を中心とした計算問題、「物理薬剤学」で実験結果のグラフを読み取る問題、「製剤学」でDDSを中心とした具体的な医薬品に関する出題が多数あります。特に計算問題は例年5~7題程度の出題が見込まれるため、公式の確認を行った後に正答率60%以上の既出計算問題を再確認しましょう。
優先して確認すべき頻出内容は、薬物動態学では▽トランスポーター▽遺伝的多型▽代謝の誘導と阻害▽投与計画▽TDM――です。物理薬剤学では▽物質溶解▽分散系▽粉体の性質のグラフや計算――に注目しましょう。製剤学では▽DDS(放出制御、ターゲティング、吸収改善)▽製剤添加物▽無菌製剤――です。参考書の図や表を用いて、イメージを大切にしながら学修しましょう。
法規・制度・倫理
近年の国試で、新傾向の問題が多く出題されるのは「倫理」の範囲ですが、受験者間で大きな得点差は見られない傾向があります。「法規・制度」については、薬剤師に必要な資質や臨床現場を意識した法規制が幅広く出題されています。特に、出題頻度が高く、かつ類似出題が多い傾向にあるのは、▽薬剤師法▽医薬品医療機器等法▽承認後の制度(再審査・再評価、副作用等報告)▽麻薬及び向精神薬取締法▽介護保険制度――です。また、▽医療法▽医療保険制度――も頻出範囲です。いずれも既出問題の演習を繰り返し、理解することで取りこぼしを防ぎ、確実に得点できるようにしていきましょう。
実務
実務は全体345問のうち95問と出題数が多く、幅広い知識を必要とする科目ですが、既出問題の内容を理解し、関連する知識の定着を図ることで、直前期でも得点力の向上が期待できます。薬理や薬物治療の知識が基盤となる問題も多いため、実務で副作用や服薬指導等の範囲を勉強した際には薬理・薬物治療で、薬の作用機序や医薬品の適応を確認することをおすすめします。
実務の中で重要度の高い範囲としては、▽チーム医療▽副作用▽相互作用▽服薬指導――等があります。副作用については、近年、薬剤師に服薬後のフォローが求められていることから、検査値を基に患者の状態を判断する症例問題への対応が必要です。代表的な検査値の基準値を確認した上で、既出問題を用いた検査値の読み取り練習をしておきましょう。
また、同改訂コアカリにおいて重要となる個別最適化薬物治療の観点から、患者背景や併用薬を考慮した処方変更の提案ができるよう、特に妊婦や小児で使用の可否が分かれる医薬品や既出問題に見られる代表的な相互作用の組み合せは必ず把握しておきましょう。





















