【ヒト・シゴト・ライフスタイル】薬剤師は製薬企業で活躍できる‐品質保証のエキスパートに 高田製薬信頼性保証本部 品質保証部品質保証室リーダー 大宮真里子さん

2026年01月20日 (火)
大宮真里子さん

 薬剤師国家試験に合格した約7割の薬学生は、病院や薬局での勤務を選ぶ。しかし、製薬企業で薬剤師として活躍する道もある。東邦大学薬学部を卒業後、高田製薬に入社し、現在は信頼性保証本部品質保証部品質保証室のリーダーとして活躍する薬剤師の大宮真里子さんに、就職までの道のりや製薬企業で働く魅力について語ってもらった。

 「千葉県出身で、家族に医療関係者はいませんでした。高校時代、何か資格があると将来安心だなと思い、薬学部への進学を考えるようになりました」。初対面でも馴染みやすい柔らかな語り口の大宮さん。高校時代は化学が得意で、薬の仕組みに興味を持ったことも志望のきっかけとなった。

 進学先に選んだ東邦大学は、千葉県に薬学部のキャンパスがあり、医学部や看護学部、理学部、附属病院も併設されていた。「いろんな学部の人と交流できる環境」で、医・薬・看護の学生がチームを組み、症例に対し各学部の視点で治療法を話し合う授業もあった。

 薬学部での6年間は「テストに追われて本当に勉強が大変だった」と振り返る。3年までは教養科目が中心。4年から専門科目が増え、5年で実務実習が始まり、3カ月ごとに病院実習、薬局実習を受けて、研究もこなした。所属研究室では、薬の苦みを緩和するマスキングの研究に取り組んだ。

 6年目は研究と並行して、国家試験に向けた勉強に明け暮れた。「朝7時に学校に行き、夜10時ぐらいまでみんなで自主勉、家は寝るだけの場所だった」と当時の日々を思い出す。

 国家試験の勉強に取り組みながら、5月から就職活動も開始。後発品企業に絞って複数社を受け、最終的に埼玉県にある高田製薬に決めた。「研究室の先輩が代々就職していて親しみがあった」という。

 就活当時、大宮さんの周りで製薬企業を目指す薬学生は「全体の1割未満。しかもMRや研究開発職が中心で、品質保証職を志望していたのは自分1人」だった。大宮さんは昔から、家族と同じく自分も将来は企業で働くイメージを持っており、「製薬会社に就職したい」と考えていた。ただ、いざ就職となると、「MRか研究開発職の二択というイメージ」の中での選択を迫られた。

 「営業職は性格的に向いているか不安。でも研究が特別好きというわけでもない」。手探りで就活を進める中で出会ったのが、製薬企業の”信頼性保証”という仕事だった。

 学生時代に知る機会は少ないが、製薬企業には薬学部出身者が活躍できる部署が多数存在する。

 例えば高田製薬の場合、▽医薬品の承認申請や薬事規制の対応を担う薬事部▽副作用情報の収集・評価や添付文書を扱う安全管理部▽製造する医薬品の品質を担保する品質保証課▽医薬品に関する正確な情報を収集し、医師や薬剤師、社内のMRへ提供する学術課――など幅広い部署がある。それぞれの部署で、薬剤師免許を持つ人材が活躍している。

 「大学時代にこうした情報を知っていれば、もっと製薬業界に興味を持つ薬学生が増えると思う」。そう話す大宮さんからは、薬学部で現在学ぶ学生に自身の経験が少しでも役に立てばとの思いが感じられた。

製造工程やミス防止体制確認‐海外製造所での監査も経験

 入社後の配属先は品質保証室。具体的な業務として、▽国内外から調達する主原料の製造所・委託先を含む製剤製造所での製造から出荷までの全工程のGMPに沿った監査▽製品の品質を確認し出荷可否を判断する市場出荷判定▽出荷後の医療機関からの問い合わせに対応する品質情報処理――などを担う部署だ。

 後発品企業の業務は製造所と製造販売業に大別される。製造所の経験者を品質保証の部署に異動させる企業が多い中、高田製薬は新卒者を品質保証の専門職として採用し、一から一貫して育てる方針を取っていた。

 もっとも大宮さんが監査に加わるようになったのは入社3年目以降。最初の2年間はGMP省令の理解から始まり、製造記録・試験記録の照査、変更・逸脱の対応、品質情報処理などを担当した。「自社で工場を持っているため、製造所の人たちとすぐに連絡が取れる環境で、分からないことはすぐに教えてもらえた」と感謝の念をにじませ語った。そうした現場の教えも大きな糧とし、徐々に知識を深めていった。

書類の解釈について上司に相談をする大宮さん(右)

書類の解釈について上司に相談をする大宮さん(右)

 3年目からは、熟練社員の監査に月1回は同行し、自社や委託先の工場が承認書通りに医薬品を製造しているかを監査する経験を積んだ。製剤製造所の監査では、原薬の受け入れ工程から包装・個装箱への梱包までの一連の製造工程を、実地確認と書類記録の両面から確認する。例えば、異種品の混入を防ぐため、異なる原料が誤投入されそうになった際にエラーが表示されるか、問題発生時に即気づける体制が整っているかといった観点で確認を行う。「原料取り違えのダブルチェックなども実際はやっていても記録に残していないケースもあり、そういう漏れを見ていく」という。

 年に2、3回、中国やインドなど海外にある製造所へ監査に行く機会もある。「私はこれまでにイタリアとスペインに行った。海外製造所を見られるのは凄く貴重な経験で、品質保証部の魅力の一つだと思う」と語り、品質保証職がグローバルな視座を磨ける仕事であることを教えてくれた。

 一方で、海外とのやり取りがある部署のため、英語の文献を読んだり、英文メールでコミュニケーションを取ったりするスキルが求められる。「語学の習得は本当に大変。まさかこれほど英語を使うことになるとは思わなかった」と苦笑する。入社後、英語の勉強をかなり頑張ってきた大宮さん。監査では英語で話す必要があるためアプリで英会話学習にも励んでいるという。

 監査業務も5年目に入るが、「まだまだ力不足で、やればやるほど監査の奥深さを実感する」と謙虚に語る。

 監査業務以外にも、市場出荷判定や品質情報の処理業務も行っている。市場出荷判定では、製造所で製造された医薬品の製造記録や試験成績書を照査し、製造過程で品質に影響を及ぼす問題が発生していないか、試験結果が規格に適合しているかを確認。問題がないと認められた場合に市場への出荷を許可する。

 「何か問題があれば、『なぜ品質保証部で見つけられなかったのか』という話になる。日々大きな責任を感じながら業務にあたっている」と表情を引き締める。

薬剤師免許が確かな強みに

 近年の後発品業界の品質問題のことは製薬企業で働く身として重く感じている。「少しでもそういう問題が起きないよう、安心して飲んでもらえるように、貢献していきたい」と語った。

 品質情報処理の業務では、例えば医療機関から、「ドライシロップの色がいつもと少し違う」といった品質情報が寄せられた場合に、工場と連携して製造工程に問題がないか調査したり、工場が講じた再発防止策の妥当性を確認したりする。「薬学生時代に実習先で医療機関の現場を見てきたので、品質情報が寄せられると現場の様子が自然と想像でき、そこが面白いと感じる」

 品質保証室は社外の人とのやりとりが多く、多くの人と関わりながら業務を進めていく部署だ。だからこそ、「常により良い関係性を心がけている」という。

後輩と打ち合わせをする大宮さん(左)。フリースペースで話も弾む

後輩と打ち合わせをする大宮さん(左)。フリースペースで話も弾む

 入社8年目の2025年4月から大宮さんは品質保証室のリーダーになった。「中堅となり、後輩や周囲にも気を配りながら、自ら考えて行動しなければならない場面が増えてきた。どうすれば業務を円滑に進められるか、常に意識して取り組んでいる」と語る。

 これから進路を選ぶ薬学生に向けて大宮さんは「製薬企業で働くことと病院や薬局の現場で薬剤師として働くことは、一見すると関係のない遠い世界のように感じるかもしれない。でも、実際にはそれほど別物とは考えなくてもいいのではないか」と語りかける。

 「病院や薬局の薬剤師は、医薬品を利用する患者の立場からその品質を見ている。一方、製薬企業では、その医薬品自体が安全かという視点で品質を確認している。製薬企業が『これは安心して服用できる』と判断して出荷し、その薬を薬剤師が調剤する。このように、両者は実は密接に連携している」と考えるからだ。

 「製薬企業で薬剤師免許がなくても働くことはできるが、薬剤師免許を持っていることには大きな意味があり、それは確かな強みにもなる。だからこそ、もっと製薬企業を身近に感じてもらい、興味を持ってもらえたら嬉しい」と大宮さんはほほ笑んだ。



‐AD‐

この記事と同じカテゴリーの新着記事

HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
医療機器・化粧品
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
研修会 セミナー 催し物
薬剤師認定制度認証機構 認証機関の生涯研修会
薬系大学・学部 催し物
薬事日報
薬学生向け情報
Press Release Title List
Press Release Title List:新製品
行政情報リスト
登録販売者試験・日程一覧
購読・購入・登録
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術