
野木森社長
アステラス製薬は25日、2010~14年度までの5カ年中期経営計画を発表した。泌尿器領域の新製品「ミラベグロン」を成長ドライバーに、過活動膀胱(OAB)市場の圧倒的シェアを獲得すると共に、新たに癌領域に参入し、5製品を上市する計画を打ち出した。その上で、国内トップシェア、中国市場の売上倍増を実現し、免疫抑制剤「プログラフ」、排尿障害改善剤「ハルナール」の米国特許切れを克服。最終年度の14年度には、売上高1兆1000億円、営業利益2400億円の達成を目指す。都内で開いた中期経営計画説明会で、野木森雅郁社長は「医療用医薬品に資源を集中して、競争力を高めたい」と語った。
主力品の米国特許切れ克服へ
新中計では、成長戦略として「領域戦略」「地域戦略」「R&Dイノベーション戦略」の三つの柱を打ち出した。領域戦略は、強みとする泌尿器領域で、新発売予定のOAB治療薬「ミラベグロン」を成長ドライバーと位置づけ、既存製品の「ベシケア」と合わせ14年度には売上高1700億円以上を達成し、グローバル市場でトップシェアの獲得を目指す。
また、新たに癌領域を第3の「グローバル・カテゴリー・リーダー(GCL)」と位置づけた。買収合意した米OSIファーマシューティカルズの事業基盤を活用し、中計最終年度の14年度までに、前立腺癌治療薬「デガレリクス」、非小細胞肺癌治療薬「タルセバ」など5製品を上市することで、癌領域に本格参入する戦略を打ち出した。
野木森氏は「OSIの買収は、癌事業を加速させる重要なマイルストーン」と強調。「癌領域は、競合が激しい中で遅れての参入となるが、アステラスの強みを生かして競争優位に立てる」と自信を示した。
一方、地域戦略として、日本では、MR約2400人を擁する強固な営業基盤を生かし、国内トップシェアの実現を目指すとした。また、米州ではラテンアメリカ、欧州ではバルカン半島、北アフリカなどに販売網を拡大し、新興国市場までカバーするグローバル展開を加速させる方針を掲げた。
特にアジアは、中国に最注力し、MRを現行の約300人から600人以上に増員。14年度には、10年度比2倍増以上の売上を達成し、アジア全体で600億円以上を目指す。野木森氏は「中国市場は、1994年から進出しており、長年にわたる実績がある」と強調。日系製薬企業トップの地位をさらに強化する考えを示した。
R&Dイノベーション戦略では、精密な診断に基づく創薬コンセプト「プレシジョン・メディシン」を掲げ、特に抗体医薬へ積極的に投資する。完全ヒト型抗体を作製するVマウス、ADC技術など、新規技術に資源を投入すると共に、新たに治験薬・商業生産用の製造設備を立ち上げる計画だ。
10年度には、OSIの買収影響として、売上高で約340億円が寄与する一方、営業利益は約170億円のマイナス影響を想定している。14年度には、中計目標の売上高1兆1000億円、営業利益2400億円に対し、それぞれプラスに寄与する見通しだ。