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米食品医薬品局(FDA)は5月28日、ドライアイの兆候や症状の治療薬として、TRPM8受容体作動薬Tryptyr(一般名acoltremon点眼液)0.003%を承認した。同薬は従来にない新しい作用機序を持つファースト・イン・クラスの画期的な新薬である。
既存のドライアイ治療の選択肢は、治療効果の発現の遅さ、患者の満足度の低さ、点眼遵守率の低さなどの理由で限られている。Tryptyrは、角膜の知覚神経を刺激して自然な涙液産生を増加させる作用を持つ。この点眼液は単回量バイアルで提供され、用量は1日2回、両眼に1滴ずつ点眼することが推奨されている。
FDAよりTryptyrの製造販売を承認されたAlcon社によると、ドライアイは最も一般的な眼表面疾患の一つであり、罹患者数は、米国では3800万人、世界では7億1900万人以上に上ると推定されている。かつては高齢化社会の疾患と考えられていたが、近年のテクノロジーの進歩に伴うスクリーンタイムの増加などの影響により、年齢や性別を問わずドライアイ患者が大幅に増加している。
Tryptyrの承認は、2つの第3相臨床試験(COMET-2試験およびCOMET-3試験)の結果に基づいている。両試験ではドライアイの既往歴のある930人以上の患者が、Tryptyr投与群またはプラセボ投与群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。
その結果、Tryptyr投与群は、投与の1日目から涙液産生量が統計学的に有意に増加した。Tryptyr投与群で、プラセボ投与群と比較して、14日目までに涙液産生量が10mm以上増加した対象者の割合は、COMET-2試験では42.6%(プラセボ投与群8.2%)、COMET-3試験では53.2%(同14.4%)であった。これらの結果は、90日目までの全ての観察期間において一貫して確認された。両試験で患者から報告された最も一般的な副作用は点眼部位の痛みだった。
米カリフォルニア大学アーバイン校の眼科教授であるMarjan Farid氏は、「ドライアイ患者の多くはドライアイの管理に苦労しており、新たな治療選択肢が必要なことは明らかだ。Tryptyrは、ドライアイの原因として知られる涙液の減少に対し、角膜神経を刺激することで直接的に作用する初めての点眼薬だ」とAlcon社のリリースで述べている。
なお、Alcon社はTryptyrを2025年第3四半期に米国で発売する予定である。(HealthDay News 2025年6月2日)
Source
https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/fda-approves-tryptyr-eye-drops-for-dry-eye-disease
More Information
https://www.fda.gov/drugs/novel-drug-approvals-fda/novel-drug-approvals-2025