富士フイルムは28日、米製薬大手メルクから、バイオ医薬品の受託製造会社「MSDバイオロジクス」と「ダイオシンスRTP」の2社を、買収すると発表した。買収額は公開していない。医薬品事業の拡大を進める同社は、2社を完全子会社化することで、成長が見込まれるバイオ医薬品事業に参入する。
今回、株式を取得したMSDバイオロジクス(英国ビリンガム)とダイオシンス(米国ノースカロライナ州)は、バイオ医薬品製造に必要な蛋白質の培養や抽出、精製にノウハウを持つ大手受託製造会社。これまで米メルクの製造子会社として一体的に運営が行われてきたが、メルクは米シェリング・プラウと合併後、受託製造事業の見直しに着手していた。
そこで今回、医薬品事業の拡大を目指す富士フイルムが2社を買収し、バイオ医薬品の生産設備に加え、高度な蛋白質培養技術などを獲得。写真フィルム事業で培った生産、品質管理やコラーゲンなど高分子材料のノウハウを生かし、バイオ医薬品事業に本格参入することを決めた。
現在、富士フイルムグループの国内生産機能は、子会社の富山化学、原薬・中間体製造を手がける富士フイルムファインケミカルズが担っている。買収した英米2社は、バイオ医薬品の海外製造拠点と位置づけ、将来的にはグループで開発した抗体医薬、再生医療製品の製造を手がけていく構想もある。今後、バイオ医薬品の受託製造市場は15%以上の成長が見込まれており、こうした機会を捉え、新たにバイオ医薬品の生産能力を獲得し、医薬品事業の拡大を加速させたい考え。
ライフサイエンス事業を成長分野と位置づけ、経営資源を重点的に投下する富士フイルムは、2008年3月に富山化学を買収し、医療用医薬品事業に参入して以来、昨年2月に三菱商事、東邦ホールディングスとの合弁で「富士フイルムファーマ」を設立。ジェネリック医薬品を含めた医薬品開発・販売に参入したほか、再生医療ベンチャー「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(J‐TEC)に資本参加するなど、積極的に医薬品事業の拡大を図ってきた。
今回、さらにバイオ医薬品の受託製造会社を買収することにより、子会社のペルセウスプロテオミクスが行う抗体医薬研究、J‐TECの再生医療事業とも連携し、バイオ医薬品事業を展開していく。
買収完了は3月末~4月上旬を予定している。