
神谷社長
4月1日に、わかもと製薬の新社長に就任した神谷信行氏は、本紙の取材に応じ、「一にも二にも赤字脱却を目指す。赤字を脱却して社員が安心して働けるようにするのが社長の仕事の一つ」と強調した。同社は4月、最終年度となる2015年度に売上高121億円を目指す、5カ年(11~15年度)中期経営計画を発表している。現場から積み上げて作成した中計で、神谷氏は「社員一丸となって取り組んで、中計を達成したい」と語った。
中計では、OTC薬で基盤を整え、ジェネリック薬(GE薬)の品揃えを強化しながら、新薬の中身を濃くしていく方向性を打ち出している。神谷氏は、「OTC薬・GE薬・医療用薬に、並行して取り組んでいくのがわが社の方向だと思っている」とする。計画では、10年度売上高97億円を15年度に121億円に、利益面では11年度に黒字転換し、15年度には営業利益8億3000万円、経常利益9億7000万円の達成を目指す。
中計のアクションプランで、薬粧事業では、乳酸菌配合薬用歯磨き「アバンビーズ」シリーズを、ロングセラー商品の「強力わかもと」に次ぐ第二の柱として育成する方針を打ち出している。既に3月に、「アバンビーズ」シリーズをリニューアル発売したほか、ブランドサイトの開設やTVCMを投入して、ブランドの確立を推進している。
神谷氏は、「乳酸菌を配合した薬用歯磨きという新しい発想の製品で、強力わかもとで培ったノウハウが薬用歯磨きに生きている」と期待を込める。家族でも歯磨剤を使い分ける時代に合わせ、ファミリーユースからパーソナルユースへの考えのもとに開発された製品で、性別・年代などに応じてチョイスできるよう、種類も豊富に揃えている。
医薬事業では、昨年12月に新薬の眼科手術補助剤「マキュエイド硝子体内注用」を上市した。「硝子体手術を行う施設は、国内では約1000施設あるが、半年も経たない現時点で、既に約600施設で採用されている」(神谷氏)とのことで、好調に推移している。「残り約400施設のうちの8割でも、採用されるのではないかと思う」と見通している。
さらに、「マキュエイド硝子体内注用」については、糖尿病性黄斑浮腫が増加傾向にあることから、今年度中に「糖尿病性黄斑浮腫」の適応で追加申請を行う考えだ。神谷氏は「早ければ6月中に第1回臨床試験の結果をまとめ、11月頃には申請を行おうかと考えている」とした。
現在は眼科に特化した形の医薬事業だが、今後の新薬の展開に関しては、眼科以外の領域も見据えている。神谷氏は「例えば皮膚科、耳鼻科、産婦人科、泌尿器科などで、他社が販売している製品の導入を検討していく」と、アライアンスの拡大も視野に入れている。
ただ、当面の課題は何と言っても「赤字脱却」。中計で、11年度に黒字転換、15年度に売上高121億円等を掲げているが、「計画を作っただけでは意味がない」とし、経営企画室内に、3カ月~半年ごとに計画の進捗状況をチェックするチームを結成した。計画通りに実行できているかどうか、あるいは計画通りには行かず軌道修正する際にも、その方法などをチェックする体制をとって、赤字脱却に全力を注ぐ方針だ。
中計はボトムアップ方式で、現場の若手社員が原案を作り、最終的に神谷氏が承認したもの。神谷氏は「全社を挙げて作成した計画を、全社一丸で取り組んでいく」と、力を込めた。