日立製作所と東京大学は19日、ビッグデータ分析の高速化に向け、相互に複雑なつながりを持つデータ(グラフ構造データ)の検索速度が大幅に向上する「動的プルーニング技術」を開発したと発表した。今後両者は、製造業のほか、社会保障での診療パターン分析による疾病リスクの予測や、緊急分野での性アクセスの検出などへの同技術の適用を目指すと共に、社会課題の解決に向けた技術革新を推進していく。
グラフ構造データはデータ量が増加したり、データの階層が深くなると検索速度が遅くなり、迅速なデータ分析や意思決定が難しくなるという課題があった。日立と東大は、このような産業界の抱える実問題の解決に貢献するため、新たなデータプラットフォーム技術の確立に向けた研究開発に取り組んできている。
今回、両者の共同研究成果の一つとして、データベース内のグラフ構造データの検索速度を大幅に向上する「動的プルーニング技術」を開発した。従来、グラフ構造データを順次たどる処理は、再帰問合せ処理と呼ばれる手続きで行われ、不要なデータを繰り返し読み取ることが必要だった。
同技術では、再帰問合せ処理の実行中に得られる中間結果をもとに、次に読み取るデータの範囲をリアルタイムに見積もることで、各処理に必要なデータをより正確に特定することができた。これにより、データ量が増加した場合や、データの階層が深くなった場合でもデータの読み取り量を抑えることができ、検索速度が大幅に向上した。
今回、製造業の製品出荷判定において、グラフ構造データの分析業務をモデル化したデータベースを用いて同技術を検証すると、再帰問合せ処理におけるデータ読み取り量を大幅に削減し、データ検索速度を従来比で最大135倍向上できることを確認した。
なお、同研究の一部は、日立と東大が2022年に東大生産技術研究所に設置した「ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学」社会連携研究部門、および「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」「統合型ヘルスケアシステムの構築」の支援を受けて行われた。
日立は既に、同技術を超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder (HADB)」に組み込み、提供を開始している。また、同技術を適用したHADBは、生産工程における業務とデータ間のつながりをデジタル空間に再現する「IoTコンパス」と共に、IoTやデータの利活用を支援するサービス群「Hitachi Intelligent Platform」でも利用できる。今後、両者は「動的プルーニング技術」のさらなる高度化やAI 連携を進めていく。
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