岡山大学放射線医学の平木隆夫教授らのグループは、がんの低侵襲治療(CTガイド下IVR)に用いる針穿刺ロボットを開発し、それを用いた医師主導治験を行った結果、全例で成功したと、5月27日に発表した。ロボットを用いることで、医師は放射線による被曝をすることなく、従来の医師の手で行う場合と遜色ない精度で針の穿刺ができた。
がんの局所治療である腫瘍アブレーション治療では、精確に病変に針を刺すためには超音波やCTなどの画像でガイドしながら行う必要があるが、超音波では体の深部にある病変や肺の病変、肥満患者などでは病変の描出が困難な場合がある。
一方、CTは病変や患者の特性に依存せず良好な画像が得られるため、針の刺入に用いる画像として適している。しかし、CTは撮影時にX線を出すため、CT装置の近くで手技を行う医師は被曝する欠点がある。医師には年間あたりの被曝限度があり、それを超えないように厳重に管理されているので、CTガイドの腫瘍アブレーションをさらに普及させるためには、術者の被曝の問題を解決する必要がある。
岡山大学では2012年から医工連携で、CTガイド下で病変に針を刺すためのロボットを開発してきた。ロボットを遠隔操作して針の刺入ができるため、医師はCT装置から離れた場所で手技を行うことができ、被曝をせずに済むことが予想された。しかし、ロボットを使うことで、針の刺入が思ったようにできなかったり、時間が余分にかかっては、患者の不利益となる。
そこで今回、治験を行い、ロボットによる針の刺入の評価をすると、針の刺入は全例で成功した。また、ロボットを用いることで、医師は被曝をすることなく、従来の医師の手で行う針の刺入と比べて遜色のない精度と時間でできることが示された。
治験の結果は、長年の社会問題の一つである「医師の職業被曝」の問題が解消される可能性を示唆するもの。治験にあたった平木氏は、「今後は、ロボットの機能をさらに進化させて、従来のがん治療の成績の向上につなげて、患者にもメリットのあるロボットにしたいと考えている。また、実用化に向けても邁進していたい」と述べている。
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