健康寿命の延伸に不可欠な「運動機能」に関し、最も自信のあるのは70代、最も自信がないのは40代だった。健康総合企業のタニタが実施した「中高年の体力低下に関する意識・実態調査2025」で明らかになった。ただ、70代では自信とは相反して運動機能が低下している実態も浮き彫りになっている。また、半数以上の職場で転倒防止が取り組まれていないことも分かった。24日にその概要を示した。
この調査は、全国の40歳以上の男女1000人を対象に、4月3~6日の4日間、インターネットリサーチにより行われた。調査では、体力の中でも日常生活で思うように身体を動かすことができる機能を“運動機能”と提示し、自身の運動機能についての評価と実態について聞いている。
“自身”あっても実際は低下
その結果、自分の運動機能に「自信がある」としたのは全体の45.1%で、運動機能に自信がないのが5割半を占めた。年代別に見ると、「自信がある」人の割合は70代(55.0%)が一番高く、調査対象者で一番若く低い結果となった40代(38.0%)を17ポイント上回り、高齢者が運動機能に自信を持っている傾向が分かった。
一方で、「立ってズボンや靴下を履く際にバランスを崩すことがあるか」では、80代以上の6割以上が、70代の半数以上が「ある」とするなど、年齢に比例して高くなっていた。さらに、「自分の運動機能に自信がある」とした70代でも42.7%が「バランスを崩すことがある」としており、自信とは相反して運動機能が低下している実態が浮き彫りになった。また、40代でも4人に1人(24.5%)が「バランスを崩すことがある」と回答しており、年齢に関わらず日々の運動不足などにより筋力が低下している人がいる状況も分かった。
フレイルの認知度が向上
“フレイル”という言葉の認知度合いについても聞いた。同社が2022年に行った調査では認知率が41.9%だったが、今回は14.6ポイント高い56.5%となり、半数以上の人が認知している結果となった。年代別に見ると年齢が上がるにつれ認知率も高くなっており、40代(35.5%)と80代以上(70.5%)の間には35.0ポイントの差が見られた。
また「自身がフレイルになることについてどのくらい心配か」に対しては、「心配である」人が56.9%となり、22年の調査(61.2%)を4.3ポイント下回る結果になった。フレイルの認知が上がったことで対策を講じる人が増え、自身がフレイルになる心配が軽減された人が増えたようだ。
運動機能の衰え、日常生活に影響
「運動機能が衰えるとマイナスの影響が出ると思う日常生活での行動」を複数回答で聞くと、「階段の昇り降り」(57.8%)と「歩行」(51.5%)が上位を占めた。次いで、「起居動作(立ち上がる、座る、起き上がるなど)」(46.4%)、「入浴」(34.1%)と続き、5位に「車の運転」(31.7%)が入った。
階段の昇り降りや歩くことなど、日常生活の身近な動作に影響が出ると思う人が多い一方で、認知機能が注目されがちな「車の運転」についても運動機能が関わると感じる人が多いようだ。
9割弱が機能維持に努める
「運動機能維持のために心がけていることがある」人は88.5%となり、多くの人が運動機能の維持に努めていた。年代別に見ると60代以上ではどの年代も9割を超え、70代(95.0%)が最も高かった。高齢者が積極的に運動をしていることが、自分の運動機能への自信の高さにつながっている要因の一つかもしれない。
また、「運動機能維持のためにやりたいと思いながらもできていないことがある」人も7割に上った。運動機能維持につながる行動を心がけているものの、十分だと感じていない人が多いようだ。“できていないこと”としては、筋力トレーニングが最も多く34.1%となり、次いでウォーキングだった。
半数以上の職場が転倒防止対策なし
調査対象者の中で現在就業中の人の7人に1人が「職場で転倒したことがある」とした。仕事場所別に見ると、工場で仕事をしている人では5人に1人となり、工場などの身体を動かすことが多い場所での転倒事故が多いことが分かった。また、約3人に1人が「職場で転倒した人がいるということを見聞きしたことがある」一方で、「職場で転倒防止のための取り組みが行われているか」に対しては、半数以上が「特になし」としている。今後は少子高齢化が進み、労働者も高齢化していく。職場での転倒事故などの労働災害も多くなると考えられるため、早急に対策を行う必要があるという結果だった。
今回の調査結果を受け、生体情報を使った運動分析を研究している新潟大学の村山敏夫准教授は、「運動機能の維持は、生活の質に直結する。単なる健康の問題にとどまらず、私たちが社会の中で安心して生きていくための『社会基盤』として考えるべき」と呼びかけている。
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