量子科学技術研究開発機構(QST)が事務局を務める医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)は、全国の関係学協会との連携のもと、「日本の診断参考レベル(2025年版)」(Japan DRLs 2025)を策定し、7日に公表した。これは2015年、20年に続く第3版で、わが国における放射線検査の安全性と質の向上を目的とした重要な指標となる。
診断参考レベル( DRL)は、放射線検査において用いられる線量が適切かどうかを評価するための「最適化のための指標」であり、ICRP(国際放射線防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)などの国際機関においてもその重要性が強調されている。DRLは、線量限度ではなく、各医療施設が自らの線量水準を見直すための参考基準で、より安全で安心な放射線検査を実現するための道しるべとなるもの。
15年に初めて策定されたDRL(DRLs 2015)は、J-RIMEの場に集まった各学協会・研究者が各々の知見を持ち寄り、全国の医療機関を対象とした線量調査を実施することで、透明性・客観性を高めた上で策定されたもので、国内初の放射線検査における線量の最適化のためのツールとして広く認知されている。
20年には第2版が公表され、同年4月に施行された医療法施行規則の改正と相まって、医療被ばくの管理が法的にも明確化され、各医療機関における最適化の取り組みが一層加速た。
第3版の改定では、過去の2回の線量調査の経験を活かし、複数の画像診断モダリティ(CT、一般X線撮影、マンモグラフィ、血管造影等)における線量調査を統一フォーマットで実施し、回答の標準化と効率化が図られた。このことにより、過去2回の調査と比べ、より多くデータ収集と精度の高い分析が可能となり、より実態に即したDRL値が反映される結果となっている。
一部の調査項目では、前回に比べ線量が低減している傾向も確認されている。これは、DRLの策定などによる医療現場における安全管理意識の高まりや、装置の技術進歩による線量低減機能の進化が大きく寄与していると考えられる。今後も、DRLを用いた線量の最適化と技術革新による低線量・高画質の放射線検査がさらに普及することにより、患者の被ばく線量の低減が期待される。
なお、第3版は、J-RIMEホームページ(https://j-rime.qst.go.jp)で公開されている。
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