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デジタル行革の薬局影響に注目

2025年07月04日 (金)

 政府のデジタル行財政改革会議は6月13日に「デジタル行財政改革取りまとめ2025」を決定した。このうち医療関連ではサービスの質を維持・向上させつつ、持続可能な形をいかに構築していくかが大きなテーマになる。

 少子高齢化の進展に伴い、地域の医療従事者の確保も重大な懸案事項となる中で、医療分野では現場のプロセスをデジタル化し、効率や質を上げていく医療DX化の取り組みが喫緊の課題となっている。

 医療DXの実現に向け必要な取り組みとして、医療データの利活用の推進が挙げられている。まず、患者自身が生涯の医療情報を活用して健康増進につなげる一次利用や、患者データを匿名化した上で集約し医学研究、創薬、医療機器の開発や医療費適正化に役立てる二次利用について、適切なルールのもとでデータの共有と活用を進めていく方針のようだ。

 昨年の取りまとめでは、電子処方箋に関して導入促進の取り組みが進められてきたが、医療DX工程表の「25年3月までに、オンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関・薬局に導入する」との目標には至らず、現在も導入率が1割程度にとどまる医療機関への導入が課題とされている。

 この課題解決に向けて政府は25年夏をメドに新たな導入目標を設定し、電子処方箋システムの必要最小限の基本機能を新たに提示した。

 また、4月からは補助金延長や診療報酬上の評価、税制措置などのさらなる導入策を講じるなど、取り組みを後押しする。

 また、25年の取りまとめでは、リフィル処方箋の活用推進にも触れている。24年3月時点でリフィル処方箋の認知度は患者29.1%、医師96.7%、薬剤師99.5%という状況にあるものの、昨年7月診療分では全処方箋に占めるリフィル処方箋の割合は、制度開始から2年経過してもわずか0.07%にとどまる。

 症状が安定している患者にとっての通院負担軽減、医療費抑制にもつながるはずだが、まだ全国的にも十分に浸透していないのが現状だ。政府としても、リフィル処方箋の活用推進に向けてKPIを早急に設定・公表し、次の診療報酬改定で適正な運用や活用策の検討を行う流れとなっている。

 今後の政策動向次第では、診療所や薬局なども既存の医療提供に向けた環境変化を余儀なくされる可能性は高い。薬局業界の関係者からも、医療DXが10年以内に定着すると予測する向きもある。

 いずれにしても、デジタル技術による業務効率化、情報連携の強化や生産性の向上が今後の医療サービスの持続可能性や医療の質確保には欠かせないポイントとなる。今回のデジタル行財政改革の方針は、そのための具体的な道筋を示しているものとして注目したい。



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