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GCP改正で治験環境改善に期待

2025年08月08日 (金)

 15日に終戦80周年を迎える。終戦80年は被爆80年も意味する。80年前の8月6日に広島、9日に長崎へ史上初の核兵器である原爆が投下され、筆舌に尽くし難い悲惨な結果を生んだ。また、終戦まで日本全土が空襲に晒された。多大な犠牲者を出して1945年に終戦を迎え、その後、56年の経済白書序文に「もはや戦後ではない」と記載された。確かに経済面から言えばそうなのかもしれないが、現在でも国内外での遺骨収集は遅々として進まず、連日のように各地の工事現場等からは不発弾が出土している。2025年の今、戦後は終わっていないのが現状だ。

 戦争は人を狂気に向かわせると言われる。戦時下では世界中で非人道的な惨劇が起きたが、日本では旧日本陸軍の研究機関である通称731部隊が、細菌兵器の研究などで人体実験を行ったなどと一部で言われている。

 以前は、医薬品と認可されていない物質を人体に投与する臨床試験は、一種の人体実験であるとの認識も見られた。人体実験と医薬品開発における臨床試験の違いは、1964年に世界医師会が採択した「ヘルシンキ宣言」に記されている。

 日本薬学会の用語解説によると、ヘルシンキ宣言では、ヒトを対象とする臨床試験を実施するためには、▽科学的・倫理的に適正な配慮を記載した試験実施計画書を作成すること▽治験審査委員会で試験計画の科学的・倫理的な適正さが承認されること▽被験者に、事前に説明文書を用いて試験計画について十分に説明し、治験への参加について自由意思による同意を文書に得ること――の3項目が必須であり、重要な原則だと説明している。自らの意思の有無が決定的に違う点だ。

 7月23日に開催された厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、改正医薬品医療機器等法の施行に向けた論点が示され、医薬品の臨床試験の実施基準に関する省令(GCP省令)等の見直しについて触れている。

 同部会においては、GCP適合性調査をリスクに応じた調査実施の合理化、SMOに対する治験依頼者の監督強化、今年発行予定のICH-E6(R3)ガイドラインを見据えた新たな考え方の積極的導入、治験従事者の負担軽減など治験の効率化の促進を盛り込んだ取りまとめを行っている。

 検討の方向性に関しては、シングルIRBの原則化、DTC(分散型治験)の円滑実施に向けた規制の合理化、リスクに応じた治験副作用等の情報収集・評価、SMOへの監督強化、ICH-E6(R3)改正内容の反映、治験エコシステム導入推進事業等の推進による国際整合された治験運用の浸透のための検討などを案として提示した。今後の検討が待たれるところだ。

 速やかな検討を経て、GCP省令改正などによって日本の臨床試験環境がより改善されていくことを期待したい。



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