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米食品医薬品局(FDA)は10月7日、特発性肺線維症(IPF)の治療薬として、Boehringer Ingelheim社のJascayd(一般名ネランドミラスト)を承認した。
Boehringer Ingelheim社のリリースによると、JascaydはIPF治療薬として10年以上ぶりの新規承認となる。また、この適応症で承認された薬剤としては、初めてかつ唯一のホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬である。この阻害薬は、抗線維化作用と免疫調節作用の両方を発揮する新たな作用機序を有し、IPF患者の肺機能低下の進行を遅らせる。Jascaydの推奨用量は1日2回、1回18mgの経口投与であるが、忍容性が低い場合は、ピルフェニドンを併用している場合を除き、1日2回、1回9mgに減量可能である。
IPFは、肺の中の空気嚢(肺胞)を取り囲む組織が厚く硬くなることで発症する。時間の経過とともに、これらの変化により肺に永久的な瘢痕が生じ(線維化)、呼吸困難が生じる場合もある。最も一般的な症状は、息切れと咳である。IPFの進行速度には個人差があり、線維化がゆっくり進む場合もあれば、急速に進む場合もある。また、多くのIPF患者は急性増悪を経験する。IPFは主に60〜70歳の年齢層で最も多く診断される。
今回の承認は、IPFの成人患者を対象とした2件のランダム化二重盲検プラセボ対照試験に基づいている。主要評価項目は、52週目での努力性肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量(4mL)とされた。
その結果、52週目でのFVCの調整済み平均変化量は、Jascaydを投与された患者のうち、18mg投与群で-106mL、9mg投与群で-122mLであったのに対し、プラセボ投与群では-170mLであり、Jascayd投与によりFVC低下が有意に抑制されることが示された。また、Jascayd18mg投与群では、プラセボ群と比較して2週目から早くも治療効果が示され、効果の差は52週目まで広がり続けた。
Jascaydで認められた最も頻度の高い(5%以上)副作用は、下痢、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、上気道感染症、抑うつ、体重減少・食欲減退、悪心、疲労、頭痛、嘔吐、背部痛、めまいであった。有害反応による投与中止率は、Jascayd18mgおよび9mg投与群(抗線維化治療の有無を問わず)で、それぞれ15%および12%と、プラセボ投与群の11%より高かった。
米南カリフォルニア大学のToby Maher氏は、「JascaydはIPFにおける肺機能低下の進行を遅らせることが実証された。忍容性が高く、安全性プロファイルも良好なJascaydは、医師が適切な患者に対して検討できる、心強い新たな治療選択肢である」とBoehringer Ingelheim社のリリースで述べている。(HealthDay News 2025年10月14日)
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https://www.fda.gov/drugs/news-events-human-drugs/fda-approves-drug-treat-idiopathic-pulmonary-fibrosis














