2026年度診療報酬改定で服用薬剤調整支援料2は、調剤報酬でも最高水準となる1000点が設定され、令和9年6月1日(2027年6月1日)から算定可能となります。その狙いは、単なる残薬整理ではなく、服用薬を継続的・一元的に把握したうえで、患者・家族の背景や希望も踏まえた薬物療法の個別最適化(薬剤レビュー)を行い、主治医へ文書で提案する高度な対人業務を評価する点にあります。本稿では、点数設定の背景から算定要件、準備の要点までを整理します。
診療報酬改定で最高水準「1000点」が付いた背景
2026年度診療報酬改定で「服用薬剤調整支援料2」は1000点となり、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の深夜訪問加算(1000点)と並ぶ“1000点級”の評価で、調剤報酬の中でも最上位クラスに位置づけられます(※深夜訪問加算は時間帯・対象患者など条件付き)。厚労省は「多くの薬局が算定を目指せるよう敢えて四桁という高い点数にした」と説明しています。一方で、知識要件の厳格化から「算定施設は限られるのではないか」との見方も示しています。つまり“高評価=誰でも取れる”ではなく、薬物療法の個別最適化を主治医へ責任をもって提案できるかが問われる点数です。
かかりつけ薬剤師指導料廃止後の「新しい対人評価」
今回の改定は、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止を受け、「かかりつけ薬剤師として実施した業務」を個別に評価する体系へ組み替える流れの中にあります。その“象徴”が服用薬剤調整支援料2で、患者・家族の希望や背景まで踏まえた薬物療法の個別最適化を行い、主治医に文書で提案する高度な対人業務を評価します。日本薬剤師会の岩月進会長も、総合的に評価したうえで医師へ情報提供する点数として「大切に育てたい」と述べました。形式的な同意取得や回数の“ノルマ化”から、実際の介入内容と質を問う評価へ――その転換点が1000点に集約されています。
服用薬剤調整支援料2の算定要件と「薬剤レビュー」
算定頻度・対象・プロセスの要点整理
算定の骨格は「頻度」「対象」「提案プロセス」の3点です。まず頻度は、同一患者につき6カ月に1回まで。さらに薬剤師側にも上限があり、かかりつけ薬剤師1人につき月4回(月最大4人分に相当)まで算定可能と整理されています。対象は、6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、かかりつけ薬剤師が服用薬を継続的・一元的に把握した結果、調整が必要と認めたケースで、評価を行い主治医へ文書で提案した場合に限られます。厚労省側は「ルーチン業務では算定は難しい」との認識を示しており、単なる残薬整理や重複チェックの延長ではなく、臨床的な評価と提案が一体になって初めて届く点数と捉えるのが実務的です。
上田薬剤師会に学ぶ「薬剤レビュー」の中身
服用薬剤調整支援料2の要件には、上田薬剤師会などが実践してきた「薬剤レビュー」業務が組み込まれたとされています。薬剤レビューは、薬剤師が患者から情報収集を行い、薬物治療上の問題を分析・特定し、薬物治療計画として文書化したうえで、主治医へ処方提案を行う流れです。イイジマ薬局の飯島裕也氏も、薬剤レビューの本質を「個別最適化された薬物治療のマネジメント」で、多剤併用・ポリファーマシーの解決につながる点にあると強調しました。ポイントは、薬の数だけでなく、患者の希望・信念、不安、生活様式、食生活など背景まで含めて評価し、提案の根拠を文書で示すこと。地域発の実践が“全国ルール”へ移ることで、薬局の対人業務の質が一段と問われます。
服用薬剤調整支援料2を算定するための準備
必要な知識・スキル・体制のミニマム
1000点は“作業量”より“判断の質”が問われるため、準備は①知識、②情報基盤、③提案力の3本柱で整理すると迷いません。知識面では、高齢者薬物療法、慢性疾患マネジメント、ポリファーマシー対策、有害事象・相互作用の評価が土台になります。情報基盤では、オンライン資格確認を通じて、患者同意の下で薬剤情報・特定健診情報を閲覧できる体制が鍵です。診療情報・手術情報も閲覧可能ですが、追加設定が必要で、電子レセプト由来の限定項目である点や更新タイミングにも留意が必要です。
さらに、主治医に「通る」提案には、根拠を添えた情報提供文書の書き方と、適切なタイミング設計が欠かせません。PMDAも医療従事者向けに重篤副作用への対応マニュアル等を提供しており、こうした安全性情報の読み解きは提案の説得力に直結します。
中小薬局が「1000点」を目指すための一歩
改定項目の中でも、服用薬剤調整支援料2は他項目と異なり「令和9年6月1日施行」とされ、準備のためのリードタイムが置かれています。ここを“研修参加・手順整備・症例検討”の期間として使う発想が現実的です。最初から多数例での算定を狙うより、ポリファーマシーが顕著で主治医との連携が取りやすい少数例から、薬剤レビュー→文書提案→フォローの型を作るスモールスタートが有効でしょう。重要なのは、1000点の算定自体を目的化しないことです。地域で選ばれる薬局像――継続的・一元的把握、適正化提案、医師への情報提供――を積み上げた結果として1000点が“ついてくる”と捉えると、体制整備の優先順位がぶれません。
薬事日報で読む服用薬剤調整支援料2
薬事日報の関連報道を時系列で追うと、服用薬剤調整支援料が「減薬の成果評価」から「薬剤レビュー(総合評価+文書提案)の評価」へと軸足を移してきたことが分かります。
まず2018年改定では、服用薬剤調整支援料が125点で新設され、ポリファーマシー対策や減薬・適正化の取り組みを報酬で後押しする枠組みが整いました。
【中医協】地域支援体制加算に35点、服用薬剤調整支援料は125点‐診療報酬改定案を答申
続く2020年改定では、薬局の対人業務評価を厚くする流れの中で、「服用薬剤調整支援料2」に100点が付いたと報じられ、「成果(減薬)に至らないケースでも“提案行為”を評価する」方向性がより明確になりました。
そして2026年度改定(中医協答申)では、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止に伴う新たな対人評価の“目玉”として、服用薬剤調整支援料2が1000点に大幅増点されました。算定要件には、上田薬剤師会などが実践してきた薬剤レビュー業務が位置づけられ、薬剤師が患者の服用薬を継続的・一元的に把握し、必要な評価を行った上で、主治医へ文書で提案することが核とされています。さらに「他の改定項目とは異なり、翌年6月に施行(=2027年6月1日から算定可能)」と整理され、準備期間が確保されました。
【中医協、診療報酬改定案を答申】薬剤レビューに1000点設定‐DgSとチェーン薬局で明暗
加えて、日本薬剤師会の岩月進会長は今回の改定を「対患者業務に評価がシフトした」と総括し、服用薬剤調整支援料2についても「総合的に評価したうえで医師に情報提供を行う点数として大切に育てていきたい」と述べています。
対患者業務に評価シフト‐日薬 岩月会長、調剤報酬改定に理解示す
また、厚労省の清原宏眞薬剤管理官も本紙取材に対し、同点数は「患者・家族の希望や背景を踏まえた薬物療法の個別最適化を実現し、薬剤師が責任を持って処方医に提案する高度な職能を評価する」ものであり、「ルーチン業務では算定は難しい」と明言しました。
【厚労省 清原薬剤管理官】薬局の立地依存から転換へ‐ビジョン10年で政策誘導
このように、点数の表面的な要件だけでは見えてこない「行政の真の狙い」や「制度変更の背景にある文脈」を点と線で結びつけられるのは、専門紙による継続的な報道ならではの強みです。1000点というかつてない高評価の裏には、薬局に対して「立地依存から高度な対人業務への完全なシフト」を求める国からの強いメッセージが込められています。
令和9年(2027年)6月の施行に向け、これから各薬局での本格的な準備が始まります。制度の波に乗り遅れることなく、地域で選ばれる薬局として生き残るためには、正確でタイムリーな情報収集が欠かせません。次世代の薬局経営に向けた確かな羅針盤として、ぜひこの機会に『薬事日報』の定期購読をご検討ください。激動の調剤報酬改定を読み解き、現場の実践に直結する価値ある情報をお届けします。
















