TOP > 社説 ∨ 

「研究開発支援薬局」を突破口に

2025年08月01日 (金)

 厚生労働省は、今年度中に医薬品の臨床試験実施基準に関する省令(GCP省令)を改正し、治験薬の院外処方を解禁する方針を示した。治験実施医療機関の来院に依存しないDCT(分散型治験)の推進に向け、被験者の近隣に位置する医療機関のみならず、省令で新たに位置づける「研究開発支援薬局」での治験薬交付を認める方向だ。

 研究開発支援薬局は治験薬の交付から治験薬の管理、被験者の病態管理、プロトコル逸脱防止などの役割を担う。GCP省令では「治験薬を治験依頼者の責任のもと実施医療機関に交付しなければならない」と規定され、院内処方しか認められていなかった。

 省令見直しには、薬局をDCTにおける新たな治験薬交付拠点とすることだけはでなく、薬局薬剤師に研究への参画を促す強いメッセージが込められている。当初、治験薬の交付を行う薬局を「パートナー薬局」(仮称)としていたが、7月23日に行われた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で示した見直し案では名称を「研究開発支援薬局」に改めたことからもその意図がうかがえる。

 薬局の治験参画は被験者、製薬企業、医療機関にとってメリットが大きく、薬剤師が被験者管理を行うことで治験期間中での被験者脱落を防ぐことができる。薬剤師を配置していない診療所による治験を薬局がカバーし、被験者は医療機関よりもさらに近隣の薬局で治験薬を受け取ることで負担が減る。

 病院に限定せずに地域で行う治験の枠組みであり、薬局間連携の機会にもつながる。製薬企業と薬剤師会との契約に基づく治験薬交付も認める方向で、地域の中心的な薬局に治験薬管理を任せ、会員薬局が交付を行うことも許容するという。

 日本薬剤師会は地域医薬品提供体制強化のためのアクションリストを策定したが、治験薬提供にもリストを活用できるのではないか。

 薬局数は全国で6万3000軒を突破し、薬局薬剤師数は約20万人に迫る勢いで増加し続けている。一方、薬局の都市部集中や病院薬剤師との業態偏在が問題視されている。来年度の診療報酬改定では、調剤に偏重した薬局に対してこれまで以上に厳しい改定が予想される。

 薬局を取り巻く事業環境の厳しさから、在宅、健康増進支援といった出口を模索する動きも見られる。生き残りには治験や市販後安全対策といった研究支援も事業選択肢に入れていくべきだ。

 薬局薬剤師が臨床から研究に参入していくために、今後は教育が重要となる。大学薬学部・薬科大学でも創薬人材の養成が求められ、薬局やドラッグストアに就職する学生にとって、創薬はもはや遠い存在ではない。治験に必要な知識を身につけるのはもちろん、臨床だけでなく、創薬にも貢献する意識を持った学生を育成していく教育体制に期待したい。



‐AD‐

この記事と同じカテゴリーの新着記事

HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
医療機器・化粧品
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
購読・購入・登録
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術