TOP > 社説 ∨ 

どうなる新政権と医療政策の行方

2025年10月17日 (金)

 日本の政局が混迷している。自民党の総裁に高市早苗前経済安全保障担当相が選出されたが、公明党の連立政権離脱により、自民単独少数政権や野党連立政権の可能性が取り沙汰される状況だ。なお流動的ではあるが、来週開かれる予定の臨時国会での首相指名が日本の政治史においてエポックメイキングな出来事となるかもしれない。

 自民の高市氏は総裁就任会見で、次期診療報酬・介護報酬の改定を待たず、秋の臨時国会で補正予算を活用して病院・介護施設へ即時支援を行う方針を示している。総裁選に向けた公約では、病院・介護施設の経営状況に問題意識を持っていた。高市氏は、創薬分野を経済安全保障に不可欠な成長分野の一つと位置づけ、分野ごとの官民連携フレームにより積極投資を行う方針も打ち出す。

 一方、仮に野党連立政権が誕生した場合を想定すると、立憲民主党と国民民主党は、共に薬価の中間年改定廃止に意欲的であり、立憲民主は次期診療報酬改定のプラス改定のほか、高額療養費の自己負担限度額を引き上げ廃止を訴え、国民民主は創薬イノベーションや新たな薬価改定ルールを提案。また、日本維新の会はOTC類似薬の保険適用除外など社会保険料改革を打ち出す。総じて見れば、医療界、薬業界にとって安心材料と言える政策が並ぶ。

 しかし、いずれも歳出拡大を伴うため、財政規律との両立は課題となる。与野党共に最優先と位置づける物価高対策は補正予算による財政出動が前提で、緊急的な措置とはいえ社会保障制度の持続可能性が問題となるのは必至だ。

 これまで医療費抑制の柱として薬価引き下げにより財源を搾り出してきたが、後発品の供給不安が常態化する中で薬価からの財源捻出も限界がある。この問題意識は与野党共通と見られ、いずれの政権が誕生しても、社会保障制度改革は避けられないだろう。

 まさに、現在議論されている高額療養費制度の自己負担額見直しであり、OTC類似薬の保険適用のあり方見直しにつながってくる。実際、年末には早速、高額療養費制度の自己負担引き上げの結論が迫られる。患者団体から反発の声が上がり、再検討となったこの議論では低所得者層への配慮が強く求められる議論であり、難しい綱渡りとなりそうだ。

 OTC類似薬の保険適用見直しは、薬剤師界にはチャンスでもある。患者負担増や受診控えを招く懸念もあるが、医療費抑制策として有力で、高額療養費のように生命に直結するような薬剤が対象になる可能性はないだけに議論への積極参画が期待される。

 日本の医療保険制度が限界を迎えつつあることは誰もが認識しているところだ。政権交代も視野に入った首相指名の可能性がある緊迫した政局の中ではあるが、社会保障制度の抜本的な改革に着手できるのか、新首相にとって大きな試金石となるだろう。



‐AD‐

この記事と同じカテゴリーの新着記事

HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
医療機器・化粧品
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
購読・購入・登録
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術