地域の医療従事者不足が深刻化する中、医師が実施する業務の一部を代行して実施したり、協働を行う病院薬剤師の確保が喫緊の課題となっている。全ての都道府県で、病院薬剤師数が医療需要に対し充足しているか判断する偏在指標が目標指標の1を下回り、薬局薬剤師の財源とされている調剤報酬を用いて病院薬剤師の偏在解消に対応すべきとの指摘も出ている。
しかし、病院薬剤師不足の解消策として本質的に検討すべき課題は、診療報酬上の対応よりも病院薬剤師の処遇改善ではないか。日本病院薬剤師会は日本薬剤師会や厚生労働省の協力を得て、人事院が定めた薬剤師の俸給表を見直すよう要望を行っているが、交渉は停滞しているようだ。病院薬剤師の処遇改善によって病院薬剤師の不足解消や資質の向上はもちろん、地域医療の質向上にも寄与するとの大義を多くの関係者に理解してもらう努力が必要だ。
現在、国家公務員のうち、病院や療養所、診療所等に勤務する薬剤師に適用される俸給表は栄養士と同じ「医療職俸給表(二)」である。日病薬は、医師や歯科医師に適用されている「医療職俸給表(一)」に薬剤師が仲間入りする目標を掲げるが、現実的には難しい情勢だ。そこで提案しているのが、薬剤師に独立した「医療職俸給表(一・五)」の実現である。
病院薬剤師に関連した様々な会合でも現場の病院薬剤師から俸給表見直しを要望する声が出ている。人事院勧告による俸給表を参考に、薬剤師の給与体系を組み立てている民間病院も多く、実現されれば一定の効果はありそうだ。
今夏の参議院議員選挙で2期目の当選を果たした本田顕子議員も本紙のインタビューで「病院薬剤師の処遇改善は大事。俸給表の見直しに向けてしっかり取り組んでいかないといけない」との意欲を示している。
ただ、人事院は処遇改善の大義名分がなければ改革には動かない。医療職俸給表(一・五)の実現に向けた道のりは険しく、まずは薬局・ドラッグストアに勤務している薬剤師との初任給格差を解消する「初任給調整手当」の導入が目標になると見られる。
病院薬剤師と薬局・ドラッグストアに勤務する薬剤師の初任給格差は4~5万円と言われており、8~10年間かけて病院薬剤師に手当を支給することで、初任給の差額をゼロにしていくとの方策だ。薬局・ドラッグストアを就職先に選ぶ薬学生が多い中、病院を進路の一つとして選んでもらいたいとの狙いがある。
病院薬剤師の必要性は病院内の他職種には理解が広がりつつあるが、国民には浸透していない。病院経営も厳しく、薬剤師の給与を引き上げる余裕がない。病院薬剤師の処遇改善を勝ち取るには政治の力が必要になる。日本薬剤師連盟の薬剤師議員2人だけでは実現困難で、国会議員による検討会創設などを通じて世論を動かしてもらいたい。














