クラウド薬歴で業務効率化‐グループ内で処方箋代行入力

大橋氏
東北地区で29薬局を運営するラッキーバッグは、最上センター薬局(山形県新庄市)など2薬局にEMシステムズのレセコン・電子薬歴一体クラウド型業務支援システム「MAPs for PHARMACY DX」を導入し、グループ内での処方箋の代行入力や在宅業務の効率化を推進していく。クラウド型システムのメリットであるロケーションフリーを活用し、人口減や高齢化に直面する東北地方の医療を支える。
ラッキーバッグは1999年2月に設立し、東北4県に29店舗(山形県22店舗、岩手県4店舗、秋田県1店舗、宮城県2店舗)を運営している。スタッフ数は194人、そのうち薬剤師は76人。「温もりの薬局をめざし、社会に貢献する」との企業理念を掲げ、在宅医療やインフルエンザや新型コロナウイルス感染症の抗原検査キットも含めOTC医薬品販売にも力を入れる。処方箋調剤のみにとどまらない、地域に根付いた薬局に向けた事業展開を進める。
グループ内で中心となる薬局が最上センター薬局だ。山形県立新庄病院の敷地内薬局として、新庄市を含む県北の最上地方の住民を中心に幅広い年齢層の患者が来局する。年中無休、午前9時から午後9時30分まで営業し、月間3000枚ほどの処方箋を平日は1日当たり薬剤師4人で対応する。
人員不足、スタッフの生産性向上は喫緊の課題だ。同薬局は調剤業務の機械化を進め、調剤室では薬剤の選択から秤量、分包などの工程を自動で行えるロボット調剤を取り入れ、調剤助手が業務を行う。
OTC販売も幅広く品揃えをするが売場は狭小なため、来局者がスマートフォン等で取扱商品の情報を確認できるようになっており、従業員の問い合わせ対応の簡素化を図る。

最上センター薬局の調剤室

最上センター薬局ではOTC医薬品も販売している
最上センター薬局内にとどまらず、グループ全体でDX化の実現にもチャレンジしている。そのシステムの一つが「MAPs for PHARMACY DX」である。もともと他社のシステムを使っていたが、クラウド型であることの利便性の高さや、初期投資が抑えられる点などが導入の決め手となった。
大橋史広社長は、「在宅医療に携わり始めた当初、『その店舗でないとサーバーに入れない』などスムーズに業務を行えない場合があった。当社の場合、特定エリアに集中出店するドミナント出店ではないので東北エリアのグループ店舗で顧客データベースを共有できるクラウドシステムが必要だった」と話す。
他拠点の業務もスムーズに

尾花沢調剤薬局
同システムを導入しているのが最上センター薬局と尾花沢調剤薬局(山形県北村山郡)の2店舗。尾花沢調剤薬局は常勤薬剤師2人で、1日の処方箋応需枚数は多い日は100枚ほどとなる。
人手不足に直面する尾花沢調剤薬局の業務支援として、尾花沢調剤薬局で処方箋が集中する場合に最上センター薬局が同システムを利用して処方入力を代行する体制をスタートした。
具体的なフローとしては、尾花沢調剤薬局と最上センター薬局で電子化された処方箋データを共有し、最上センター薬局の事務員がクラウド上で処方入力を行う。処方入力をした段階でシステム上にはその工程が終了したことを示すステータスが確認でき、拠点が異なる場合でもスムーズに業務を行えるのが利点だ。
既に成果が見られつつある。システム導入以前の尾花沢調剤薬局は事務員の残業が常態化していたがその問題が解消され、「システム化のおかげで働きやすくなった」と歓迎する声が出るようになっている。
将来的にはグループ薬局の処方箋を1カ所で代行入力する「入力センター」への拡張を視野に入れる。全店舗に同システムを導入する構想を持っており、大橋氏も「入力センターの運用という意味ではまだ入口段階で、グループ全体で運用できるようになれば」と見通す。今後、具体的な方法などを検討していく考えだ。
さらに「MAPs for PHARMACY DX」を在宅業務にも応用する。最上センター薬局に所属する事務員とエリア共用の乗用車からなる在宅チームを形成し、最上センター薬局を拠点としてエリア内薬局の薬剤師が効率良く在宅業務に携われるシステムを検討している。
大橋氏は「タブレットPCを持っていけばチームで在宅業務ができる時代になっている。事務員が車の運転や訪問先での業務補助を行うことで薬剤師が移動中に報告書の作成や患者宅で専任業務ができる」と語る。
同社が薬局を展開している地域は人口減少、高齢化が進んでいるが、「システムの技術革新で地方であっても都心部と同じことができるようになっている。地方からスタートした薬局として人とのつながりを大事にしながら、医療サービスを提供し、温もりの薬局を目指したい」と意欲を示す。
最上センター薬局(EMシステムズ)
https://service.emsystems.co.jp/maps_series/for_pharmacy_dx/