順天堂大学は7日、同大の宮内克己特任教授らのグループが、高齢者を対象に国際的に広く用いられている評価スケールである「老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale-15:GDS15)・便秘症状重症度(CSS)・消化器症状関連QOL問診票(出雲スケール)を用いて、うつ症状の重症度と上~下腹部症状のQOLの低下、便秘重症度が関連し、高齢者のうつ症状が便秘症状と関連していることをわが国で初めて報告したと発表した。
高齢者の便秘症状は、うつ症状と同様にQOLを低下させ、近年では便秘は冠動脈疾患・脳血管疾患・慢性腎疾患・フレイル・サルコペニアと関連し寿命を縮めるとも報告され、うつ症状・便秘症状の予防対策は重要となっている。今回、高齢者専門大学病院における大規模前向きコホート研究(JUSTICE研究)の登録時データを用いた横断研究において、高齢者のうつ症状と便秘症状との関連を検討した。
対象は、順天堂東京江東高齢者医療センター内科外来を受診した65歳以上の高齢者で、自立歩行可能(杖歩行含む)である男性427人、女性557人の計984人(平均年齢78.1±6.1歳、平均BMI22.9±3.7)
高齢者のうつ状態評価は、「GDS15」を用いて評価し、GDS15スコアが0~4点が正常、5~9点が軽度うつ状態、10~15点が中等~重症度うつ状態とした。全高齢者のうち、GDS15スコアが正常は603人(61.3%)、軽度うつ状態は319人(32.4%)、中等~重度うつ状態は62人(6.3%)で、軽度もしくは中等~重症度のうつ状態の高齢者は38.7%だった。
GDS15(うつ症状)重症度別に見た各種腹部症状スコアの比較では、うつ症状の重症と、消化器症状のQOLの低下・便秘重症度が関連していた。また、全ての上~下腹部症状(逆流・胃痛・胃もたれ・便秘・下痢)のQOLの低下や便秘重症度とも関連しており、便秘QOLスコアが最も相関係数が高かった。
高齢者では、うつ症状の強さに比例し、便秘症状は重症だった(便秘重症度・便秘QOL)。また、うつ症状の強さに比例して、逆流・下痢の症状も悪化しており(逆流QOL・下痢QOL)、やせ(BMI)や認知機能低下(MMSE)とも関連した。
今回の結果は、うつ症状や便秘症状は共に高齢者の健康長寿に影響を及ぼすため、人生100年時代のわが国で、高齢者のうつ・便秘予防・対策への重要性が示唆された。今後、同研究グループは、この知見をもとに、高齢者の健康寿命延伸を目標に、便秘やうつ症状に対して予防・介入を含めた臨床研究を進めていく。
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