静岡県立大学は7日、同大薬学部の山下賢二助教らや北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の林裕樹特任准教授らとの共同研究で、ケトンの新規光触媒作用を見出し、カルボキシラジカルを効率的に調製する手法を開発したと発表した。
カルボキシラジカルは、医薬品や天然物、機能性材料などを合成する上で有用な化学種。そのため、これまでに様々なカルボキシラジカル調製法が開発されてきた。しかし、従来法では高価な(金属)触媒の使用や、反応後に廃棄物となる試薬を添加する必要がある点などが課題だった。
今回の研究では、市販で入手できる安価なケトン触媒とカルボン酸を混合し、そこに適切な波長の光を照射すると、カルボキシラジカルが生成することを見出した。
カルボキシ基の O-H結合は非常に強固であり、O-H結合を切断してカルボキシラジカルを調製することは困難とされてきた。一方、ケトン触媒を用いると、カルボン酸との水素結合形成を駆動力として水素原子移動によってO-H結合が切断され、カルボキシラジカルが生じる。
このようなケトンの光触媒作用は前例がなく、WPI-ICReDDの計算技術による触媒機構の予測と今回の研究グループによる実証実験を通じて、初めてその機構を発見することができた。さらに、ケトンの新規光触媒作用を利用することで、脂肪族カルボン酸の脱炭酸的官能基化反応、および芳香族カルボン酸の位置選択的C?Hアルキル化反応の開発にも成功した。
こうしたカルボン酸の変換技術は、生物活性を示すカルボン酸にも適用できたことから、医薬品探索研究の推進に寄与することが期待される。
なお、この研究成果は、日本時間3日(木)公開の Journal of the American Chemical Society に掲載された。
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