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注視したい新政権の医薬政策

2006年9月20日 (水)

 きょう20日は自民党総裁選の投票日である。これまで候補者3人の論戦から、次期政権の課題が見えてきた。3候補とも改革継続路線であり、経済成長を重視している。持続可能な社会保障制度の構築も最重要課題の一つだ。

 谷垣禎一氏が、社会保障財源の目的で、消費税率アップを提案していることに目を奪われがちだが、総裁最有力とされる安倍晋三氏も、公的医療保険の給付範囲を見直す必要性に言及した。医薬関係者には、来る新政権下で具体化の論議へ参画していくため、各候補の主張に耳を傾け、入念な準備を求めたい。

 経済成長の重視は、医薬産業界には好機だ。政府の方針は「経済成長戦略大綱」に描かれている。「科学技術によるイノベーションを生み出す仕組みの強化」「医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化」が盛られた。基盤となる科学技術の振興、手薄な臨床研究、治験の実施環境、承認審査の充実が謳われ、財政対策の草刈り場だった医薬産業は、国が認めるリーディング産業に位置づけられた。

 何より大事なのは具体策。今年度に実施する施策もあるが、課題はその都度発生する。大綱も「積極的な官民対話を実施する」方針を示しているが、成長を確実なものとするには、政府と産業界が継続的に会合を持ち、課題、施策の方向を議論できる場の創設が必要だ。

 公的医療保障制度を持つ英仏独には、その場が設定されている。日本製薬工業協会は、総理・関係閣僚、産業界と医療界の代表による「対話の場」を提案しており、具体化に向けて、関係者には全力を傾注してほしい。

 そうした場では治験の環境整備などに加え、薬価制度も議題に取り上げたい。産業界の将来に大きく影響する制度だからだ。社会保障の観点だけでなく、経済成長の観点も加え議論すべきだ。

 承認審査の充実は、欧米に比べ極端に少ない審査員を増やして審査の迅速化を図り、新薬の上市を早められれば、医療にとっても企業の業績にとってもプラスだろう。各候補が提唱する“安心で安全な国づくり”という点からも必要に思える。

 しかし審査員が所属する医薬品医療機器総合機構も、政府決定の公務員改革の中では人件費抑制の対象。定員削減も考えられる。政権構想と政府決定は矛盾していないか、医薬関係者は質してよい。ただ、現在制限されている製薬企業出身者の審査員採用を求める製薬協の提言は、慎重な対応が必要だ。採用制限は薬害事件を踏まえた国会決議に基づいており、提言の理解を得るには、まず過去の事件や決議に対するスタンスを説明することが大事だと考える。

 麻生太郎候補は、イノベーションのための「大胆な政策減税」を提言した。産業界も、研究開発の促進には必要と主張している。ただ、新薬創出には10年以上かかる。成果を求めるなら、一過性の減税では済まない。財政バランスの中で検討されるべき問題だろう。

 一方、社会保障制度では、公的医療保険の給付範囲見直しへも言及があった。高齢化に伴って崩れる給付と負担のバランスをとるための一方策として提案されたものだ。負担のあり方も含め、国民的議論が必要としているが、公的給付の必要な範囲が何かは明らかではない。医療改革法の付帯決議「安易に公的医療保険の範囲の縮小を行わず」とも絡む。社会保障の後退につながりかねないだけに、慎重な議論が必要だろう。

 経済成長も社会保障も医薬の世界のみならず、国民の関心も非常に高い。医薬関係者は、エゴに陥らず、政権の向こう側にある国民生活、国民の理解を念頭に議論、主張することが求められる。




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