テルモは25日、臓器提供者(ドナー)から摘出した移植用臓器を保存する「臓器保存デバイス」のイノベーターである英国のOrganOx社の株式を総額約15億米ドルで取得し、同社を完全子会社化することについて、同社および同社の株主と最終契約を23日付で締結したと発表した。今回の買収を通じテルモは、未充足ニーズが大きく存在し、今後も高い成長が期待できる臓器移植関連分野に参入していく。
今回の買収は、テルモが医療機器開発において長年培ってきた技術力と専門性に、OrganOx社が有する常温機械灌流(NMP:Normothermic Machine Perfusion)の知見やノウハウを融合することで、革新的な臓器保存デバイスをグローバルに提供していく。これにより、移植用臓器の使用率向上、マージナルドナーの臓器の活用促進、移植後成績の改善、夜間や緊急の移植手術の回避による医療従事者の負担軽減など、臓器移植に関する様々な課題を解決し、待機患者への移植機会の拡大および移植医療の発展に貢献していく。
OrganOx社は、2008年にオックスフォード大学からのスピンオフで設立された医療テクノロジー企業で、NMPに対応した先進的な臓器保存デバイスを提供している。
同社が開発した肝臓用のNMPデバイス「metra」は、21年に米国FDAの承認を取得し、22年に米国で上市されているほか、EU、英国、オーストラリア、カナダでも薬事承認を取得し事業を展開しており、これまで延べ6000例以上の肝臓移植での利用実績がある。同社は、肝臓用NMPデバイスにおけるリーディング・プレイヤーの地位を確立しており、今後も市場成長を大きく上回る売上成長を計画している。さらに同社は、30年頃の実用化を目指して腎臓用のNMPデバイスを開発を進めている。
テルモは、25年3月にコーポレートベンチャーキャピタルのTerumo Venturesを通じてOrganOx社に出資を行い、同社と良好な関係を築いてきている。今回の買収は、臓器移植関連分野への参入を通じて、テルモの中・長期的な成長を牽引する新たな事業を確立し、事業ポートフォリオを高度化することを目的としたもの。
今後、両社の強みを生かしたシナジーの創出に積極的に取り組み、テルモグループ全社のアセットを活用することで、より付加価値の高いNMPデバイスの実現を目指す。これにより、臓器移植の待機患者と医療現場の双方が抱える課題に対する革新的なソリューションを提案していく。
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