薬局薬剤師の業務の質や効果を客観的に評価する指標の確立が日本で進んでいる。一つは薬局版クオリティ・インディケーター(QI)、もう一つは「Perceived Service Quality Scale(pSQS)」だ。指標は活用されることで初めて効果を発揮する。関係者はこれらの指標の意義を理解し、今後の活用の方向性について議論を深めてほしい。
薬局版QIは、様々な切り口で薬剤師の業務の質を数値で可視化するもの。日本人を含む各国の関係者が集まってQIの定義を制定し、各国で開発や運用が始まっている。
こうした国際的な動きに関わった薬剤師の藤田健二氏(シドニー大学コーリング医学研究所医学部リサーチフェロー)らが日本で薬局版QIの開発や有用性評価に取り組んできた。その過程で、例えば薬剤師の在宅訪問業務の質を評価する有用なQIとして「患者の嚥下機能を確認した割合」などを見出した。
昨年度から2年間の厚生労働科学研究費補助金事業が始まり、約20種類の治療薬領域にまたがる180種類のQIで高齢患者に対する薬局薬剤師のケアの質を評価する取り組みが進んでおり、本格的な検証段階を迎えている。
一方、pSQSは、患者目線で薬局サービスの質を評価する国際的な指標である。来局から会計までの一連のプロセス全体を患者経験価値(PX)として評価する仕組みで、既存の患者満足度調査とは性質が異なり、サービスの実態や質を把握しやすい。
和歌山県立医科大学薬学部社会・薬局薬学研究室の鈴木渉太助教らの研究グループがこのほどpSQSの日本語版を開発した。
日本語版では、薬局を利用する患者に「この薬局のスタッフは、処方薬のことをいつでも質問することができる」など6領域18種類の評価項目を投げかけ、「非常にそう思う」など8段階の回答を得て、サービスの質を評価する。
薬局版QIやpSQSの特徴は、科学的に確立された指標を用いて薬局の業務やサービスの質を数値で可視化できること。これらの指標を活用すれば、自薬局の業務やサービスの現状を把握し、全国平均値や地域の他薬局の数値と比較したり、継続的な改善につなげたりできる。
薬局は経済的な評価の構造上、調剤報酬の算定要件を満たすことや、件数をいかに伸ばすかをゴールに設定しがちだ。本来はその先にあるより良い医療の提供や、地域住民の健康支援というゴールを強く意識して業務に取り組むべきだろう。指標はその羅針盤になり得る。
薬局の存在意義を高め、社会から評価を受ける上でも指標は役立つ可能性がある。一方、業務の質やサービスが低い薬局があぶり出され、改善や淘汰の圧力が高まる側面もある。今後どこまで指標を活用できるかは、こうした将来像に向き合う関係者の覚悟にかかっている。























