2025年が間もなく終わろうとしている。戦後80年、昭和100年に当たり、大阪・関西万博の開催から米不足問題、参議院議員選挙での自民党大敗、石破茂首相の退陣、女性初の高市早苗首相の誕生など話題の多い年となった。
医療・薬業界をめぐっては、新型コロナウイルス感染拡大が収束した後の世界においてもまだトンネルから抜け出せていない。一方で、光明がなかったわけではない。当たり前と思われていた医療・医薬品の提供が難しくなり、国民にも危機意識が共有されるようになった。これまで放置されていた問題を解決するための構造改革に踏み出した年であったと考えたい。
医療機関と薬局は物価高騰と賃上げへの対応に追われた。日本経済は長年のデフレからインフレに転換し、2年に1度行われる診療報酬改定では変化に対応できなくなっている。
政府は、今年度の補正予算で医療機関・薬局の物価高騰に対応した賃上げ対応として5000億円超を措置した。補正予算はあくまでも「止血」の措置とし、26年度診療報酬改定では診療報酬本体を3.09%引き上げる大胆な対応に踏み切った。引き上げた財源が地域医療で奮闘する医療従事者に行き渡るよう各施設に取り組んでもらいたい。
25年は地域包括ケアシステムの構築年とされていたが、現在の医療の姿は高齢者が要介護となっても住み慣れた地域で自分らしく暮らすとする理想像にはほど遠い。地域包括ケアシステムの一翼を担う薬局・薬剤師は20万人に迫る勢いで増加する一方、都市部の集中と地方部の不足という地域偏在が大きな課題となっている。
医療の経済合理性が課題とされる中、デジタル手法によるサービスとの差別化も求められる。薬局・薬剤師本位ではなく地域住民本位で薬局機能・薬剤師サービスのあり方を考えなければならない。
製薬業界は、創薬スタートアップが生み出した研究成果を製薬企業が引き継いで新薬開発を行う産業構造への転換に迫られている。製薬各社が研究開発の意思決定を行う際に重要となるのが事業の予見性だが、米国トランプ政権による最恵国待遇薬価政策がもたらす市場への影響が不透明であり、企業の取り組みだけではなく国の関与が必要だ。
医薬品の安定供給問題は依然として解決の見通しが立っていないが、企業間で後発品の品目統合を進める動きが出てきた。安定供給責任は医薬品を製造販売するメーカーにあるが、医薬品を扱う全ての人たちに適切に供給する意識が求められる。
医薬品流通では医薬品卸が苦境に直面している。補正予算では国が認定した医薬品卸に60億円超を支援することとなったが、中長期的視点で支える仕組みが必要だ。26年は構造改革をしっかりと進め、明るい希望が感じられる年となることを期待したい。






















