
左図:予備実験の解析結果 右図:検証データの解析結果
アルケア技術研究部と岡山大学の中村隆夫教授の共同研究グループは、保湿機能などに関係する「皮膚バリア機能」の定量的評価に関するこれまでの研究から、角層の電気抵抗と電気容量から皮膚の水分蒸散量を推定できる計算モデルを開発し、測定時間わずか5秒の皮膚測定機器を試作した。この機器を用いると、事前準備なども含めて合計5分程度で測定が完了する。臨床現場でも「皮膚バリア機能」を簡便かつ定量的に評価できる可能性があり、皮膚トラブルの予兆を捉え早期からの予防的ケアの実現が期待される。
これまで皮膚バリア機能を調べる方法として、皮膚の水分蒸散量を経皮水分蒸散量計で測る方法が広く使われてきた。しかし、この測定方法を正確に行うには、温度や湿度環境などを厳密に管理し、測定前にしばらく安静にするなどの準備が必要などの問題がありる。そこで、経皮水分蒸散量計に替わる、簡単な測定方法の開発が求められている。
共同研究グループは今回、皮膚の水分蒸散量を推定する新しいモデルを開発した。
これまでの共同研究で、▽電気の流れにくさ(電気抵抗)と電気のたまりやすさ(電気容量)によって、角層の厚さと角層表面の水分量を推定できる▽角層の厚さや角層表面の水分量が皮膚からの水分蒸散に関係している――ことを明らかにしてきているが、「電気抵抗」と「電気容量」という二つの値から、皮膚から蒸散する水分の量を推定できるのではないかとの仮説を立てた。
実際にこの仮説を検証した。対象者25人(平均年齢40.8歳:最小28歳から最大63歳)について、1被験者ごとに洗浄のみを行った箇所(通常皮膚)と、テープによる角層剥離後に洗浄を行った箇所(角層を薄くした皮膚)を、それぞれ経皮水分蒸散量計と研究開発段階の皮膚測定機器(試作機)で測定を実施すると、[図]のような結果が得られた。
今回、「皮膚バリア機能」の評価に使われてきた“皮膚の水分蒸散量”が、「電気抵抗」と「電気容量」という二つの電気的な性質を組み合わせることで推定できる可能性を見出した。この方法によって、従来は難しかった病院などの臨床現場や介護施設、さらには多くの人を対象とした大規模なスクリーニングの場でも、皮膚の状態(角層厚、表面水分量、皮膚の水分蒸散量)を簡単かつ迅速に評価できるようになる可能性がある。
共同研究グループは今後、皮膚トラブルがある状態での評価可能性を検討していくことや、見た目や感覚だけでは分からなかった皮膚の状態の“数値化”により、誰もが自分に合ったスキンケアを行い、健康な肌を保つことが当たり前になる社会の実現を目指して研究を進めていく。
中村教授は、「肌のバリア機能評価のため、角層の厚さ、角層の水分量および皮膚の水分蒸散量の3要素を同時かつ瞬時に推定できるモデルを開発し、測定装置を試作した。今回の研究結果が疾患、加齢、美容などあらゆる皮膚科学領域において役に立てればと思います」とコメントしている。
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