
中村氏
会期中3万人以上が訪れる国内最大級の医療や健康等に関するB to B商談会・展示会の「健康博覧会/Care Show Japan」が2月25~27日、東京・有明の東京ビッグサイトで開催された。今回は「ボディ&マインドリカバリーEXPO」の領域もあり、“リカバリー”が注目された展示会でもでもあった。26日には、「トレンドで終わらせない。今『リカバリーウェア』が注目される背景とこれからの市場」と題した講演が行われた。
講演したのは、リカバリーウェアを製造・販売している株式会社ベネクス(神奈川県厚木市)代表取締役の中村太一氏。同社は、独自に開発した「ナノプラチナなどの鉱物などを含む独自素材『DPV576』を練り込んだPHT(Platinum Harmonized Technology)繊維」を素材とする、いわゆる「リカバリーウェア」を2010年、世界で初めて開発した会社。現在までに230万枚以上を売り上げている。
中村氏は、大学卒業後まず介護施設を運営する会社に就職した。介護現場では、床ずれ・褥瘡という大きな問題があり、「それをケアするパッドを作ったら、非常に社会的に意義があるんじゃないか」ということで、会社を辞めて2005年ベネクスを立ち上げ、褥瘡予防用マットの開発を始めた。その過程で開発されたのが「PHT」という繊維。しかし、「介護の分野ではなかなか芽が出な」かったという。
転機となったのは、東京ビッグサイトの展示会で大手スポーツジムのバイヤーと出会ったこと。そのバイヤーは、ジムに通ってくるような人は運動や栄養には気を使っているが、休養のことは意外にもなおざり状態。そこで、あえて意識せずに、身に付けているだけで休養に役立つようなことがPHT繊維を利用してできるんじゃないかと思いついたのだという。このことを契機に、2008年頃からベネクスでは、「事業の軸足を休養にフォーカスして、科学的エビデンスをもった」リカバリーウェアの開発に本格的に取り組み始めた。
「最初はそういったアスリートの休養ということからリカバリーウェアに火がついた」。しかし、健康の3要素の中で、運動と栄養に比べて休養は研究が進んでいない分野だ。そこで、運動生理学や栄養学に倣って、「休養学」という学問体系を一般社団法人日本リカバリー協会という組織を立ち上げ、学問的な方面からも取り組みを始めた。
こうした取り組みを経て2010年、ベネクスはリカバリーウェアを完成した。中村氏は当初からリカバリーと医療の分野の近さを意識し、このリカバリーウェアを医療機器として認めることはできないか厚生労働省に相談していたという。しかし、単独企業でそれを進めるにはコストと時間がかかりすぎるということでこの企ては難航した。状況が動いたのは2020以降だ。「2020年ぐらいから競合他社も増えてきて、市場が大きくなって、それと同時にちょっとルールから逸脱したような商品も市場に見受けられるようになった。その事態を重く見た厚生労働省が新しい家庭用遠赤外線血行促進用衣という分類を作ろうということで本格的に動いて、ようやく一般医療機器として、例えば疲労回復や血行促進という言葉を使っていいですよといったことが認められた」という。
その間2018年には神奈川県が、介護における「未病」の分野を支援して産業化していこうということで認定を始めた「ME-BYO BRAND」に選ばれ、また世界各国で特許を取得するなどしている。中村氏によると、ウェアに限らない、いわゆるリカバリー用品の市場は2019年に約4兆円だったが、2025年には7兆6638億円になった。これからも成長が見込める市場だという。
講演の締めくくりで中村氏は、「一般医療機器というルールができたが、ルールから逸脱してしまった事案も起きている。新しい市場ができるときは企業がどういうスタンスで仕事をしていくか非常に大事だと思っている。お客様のことを考えて安全や効果をきちんと検証する、そういったことを企業の責任としてやっていく、そこは本当に企業のスタンス次第だ。そういう志を持ってやっている企業さんとはぜひ連携をさせていただきたいし、ともに市場を作っていきたいと思っている」と語った。
参考情報:一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」
家庭用遠赤外線血行促進用衣(一般的名称)の定義は次のとおりである。
「遠赤外線の血行促進作用により疲労や筋肉のこり等の症状改善を行うことを目的とした、衣類形状の器具をいう。生地に鉱物等による特殊な加工が施されており、一定程度の遠赤外線を輻射する。上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿部を被覆する。ただし、パーツ形状は含まないものとする。」
中村氏は、ほぼ、自社のリカバリーウェア=家庭用遠赤外線血行促進用衣という使い方をしているが、厚生労働省では「リカバリーウェア」という用語を使っていない。少なくとも「通知」では一切使っていない。推奨もしていない。
一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」が定められたのは令和4(2022)年10月11日。同日「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第五項から第七項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器」(平成16年厚生労働省告示第298号)が改正され、新設された。
厚生労働省では、これに関連して、同年12月14日薬生機審発1214第1号、医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設に伴う既存品目等の取扱いについて」を発出している。ここでは内容は省略するので、詳細は下記参照。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7207&dataType=1&pageNo=1
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