大塚製薬は24日から、低ナトリウム血症の改善に用いる経口のバソプレシンV2‐受容体拮抗剤「フィズリン錠30mg」(一般名:モザバプタン塩酸塩)を発売する。抗利尿ホルモンを産生する腫瘍によって、体内に水分が溜まり、体内のナトリウムが薄まる症状に対し、同剤を投与することで電解質排泄の増加を伴わずに水分を排泄させる作用を持つという。
同剤は大塚製薬が合成したもの。効能・効果は「異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍による抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」で、この適応では国内初の薬剤。1日1回食後に投与する。
これまでは、厳格な水分摂取制限による治療が中心に行われていた。オーファンドラックで国内での対象患者数は年間約450人。薬価は8734・40円。
SIADHは、中枢性疾患や呼吸器疾患などで発症するが、同剤は異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍という悪性腫瘍が原因で引き起こされる症状が対象となる。抗利尿ホルモン(バソプレシン)が過剰に産生されると、V2‐受容体を介し、腎臓からの水の排泄が抑制され水分貯留を起こすし、希釈性低ナトリウム血症に至る。錯乱などの症状が現れる。同剤はV2‐受容体と拮抗することで、低ナトリウム血症の症状を改善するとしている。
国内治験は28例行われ、副作用発現率は39・3%。主なものは口渇(21・4%)、AST(GOT)上昇(7・1%)、ALT(GPT)上昇(7・1%)、血清カリウム上昇(7・1%)などだった。
医学専門家として臨床開発に携わった静岡がんセンターの山口建総長は、「低ナトリウム血症のために抗癌剤治療が実施できない患者さんや、厳しく水分摂取が制限されているために著しくQOLが悪化した患者さんにとって大きな福音になることでしょう」と大塚を通じコメントした。