国内製薬企業大手4社の2010年3月期中間決算(連結)が5日、出揃った。海外で売上を伸ばしてきた各社とも円高が響き、武田薬品とエーザイは為替の影響を吸収し切れず、減収に落ち込んだ。一方、アステラス製薬は主力品の伸長でカバーし、増収を確保。第一三共は、ランバクシーの買収効果で大幅な増収となった。ただ、利益面では、武田とエーザイが増益を確保したのに対し、アステラスと第一三共は売上原価や研究開発費の増加が利益を圧迫し、減益となる対照的な中間決算となった。
売上高を見ると、国内トップの武田は、国際戦略製品の「ピオグリタゾン」が4・1%減、「ランソプラゾール」が11・2%減、「カンデサルタン」が5・8%減、「リュープロレリン」が9・0%減と軒並み落ち込み、6・4%の減収と円高が直撃した格好となった。
エーザイは、主力のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」が円高の影響を最小限にとどめ、2・3%の増収を確保したが、抗潰瘍剤「パリエット/アシフェックス」が11・2%減と大幅に落ち込み、癌領域のMGI製品も売上を減らした結果、1・0%の減収となった。
一方、アステラスは、グローバル製品の過活動膀胱治療剤「ベシケア」が10・5%増と好調で、国内の主力製品群も伸長。円高の影響を受け、1・3%減となった免疫抑制剤「プログラフ」の落ち込みを吸収し、0・3%の増収を確保した。
第一三共は、グローバル製品の高血圧治療剤「オルメサルタン」が二桁成長で円高の影響を吸収した上、連結化したランバクシーの買収効果が寄与し、15・8%増と大幅な増収となった。
海外売上で成長を牽引してきた各社とも、円高のマイナス影響が直撃する中、主力品の伸長でカバーしたアステラス、第一三共が増収を確保したのに対し、武田、エーザイは円高の影響を吸収しきれなかった。特に武田は、売上高にして516億円が失われた計算となった。
しかし、対照的に営業利益は、武田とエーザイが増益を確保したのに対し、アステラスと第一三共は減益と2極分化の傾向がはっきり分かれた。
アステラスは、製品構成の変化が売上原価を押し上げ、1・5%減。第一三共は、後期開発プロジェクトへの研究開発費など、先行投資が膨らんだ結果、17・5%減と二桁の減益となった。
一方、武田は、買収に伴い発生したインプロセス研究開発費が大幅に減少した反動で、185・2%増。エーザイは、米国での研究開発費が増加したものの、販管費の効率化などによって5・5%の増益を確保した。
通期は、引き続き円高傾向が続くと見られるが、武田を除く3社が増収予想、アステラスを除く3社が増益予想となっている。武田は、円高の影響を吸収できず減収、アステラスは売上原価と研究開発費を含めた販管費の増加を見込み、二桁の減益を見込んでいる。