厚生労働省は、「抗心不全薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂案をまとめた。現行ガイドラインが策定された1988年以降、心不全の概念や治療法が大きく変わってきたことを踏まえ、生命予後や患者の生活の質(QOL)の考え方を明確にし、治療薬剤の評価方法を改めて整理している。来月15日までパブリックコメントを募集し、通知を改正する。
改訂は、同志社大学生命医学部の篠山重威教授らによる研究班が、昨年度に実施した研究を受けたもの。高齢化の進展に伴って患者が増加し、治療目的が策定当時の「心機能の改善」から「QOLと生存率の向上」に代わり、治療薬も強心薬や血管拡張薬から、β遮断薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬に移っていることを反映させている。
まず、急性心不全については、治療目標として、自覚症状改善、身体所見改善、血行動態改善、救命達成、家庭・社会復帰、QOL保持を位置づけている。また、臨床試験では救命達成の可否、患者負担軽減、退院時や退院後の障害程度の軽減を検討するよう求め、有効性の評価項目として、臨床徴候・症状、血行動態、予後を挙げた。採用すべき指標にも言及している。
慢性心不全については、生命予後とQOLが、必ずしも相関しなことが明らかになっていることを指摘。命予後の評価では、少なくとも1年以上の経過観察による追跡を提案している。
一方、QOL改善をめぐっては、β遮断薬の場合、運動耐容能が低下することや、精神・心理的な側面が大きな規定因子であることを解説し、選択的セロトニン再取り込み阻害剤など、直接的な向精神作用が期待できる薬剤があることも紹介している。