1月にジェネリック医薬品(GE薬)の国内販売をスタートさせた興和テバの井上信喜社長は、本紙のインタビューに応じ、国内中堅GE薬メーカーの大正薬品工業を買収した背景を語った。その中で、井上氏は「業界の将来を展望したゴールが、両社で一致した結果」とした上で、「GE薬に大きな注目が集まる中、GE薬メーカーは社会の期待と要望に応える責任がある。それを現状の企業規模、資金力で果たせるかどうか疑問だ」と問題提起。GE薬メーカーとして、社会的な責任を果たすための買収劇だったと強調した。現在、興和テバは大正薬品の発行済み株式の3分の2以上を取得しているが、今後の経営体制について「当面、完全統合はない」と、完全子会社化を否定した。
興和テバは、2015年までに売上高1000億円の目標達成に向け、[1]自社開発[2]他社製品の導入、共同開発・販売[3]合併・買収‐‐の選択肢を、戦略的に使い分ける方針を打ち出してきた。大正薬品の買収は、三つ目の選択肢を行使したことになるが、井上氏は、「大正薬品の経営判断として、現時点ではなく、将来的なGE薬業界を展望したときに、興和テバとの提携が有効と決断を下されたのだと思う」と話す。
その上で、政府がGE薬の使用促進に乗り出す中、GE薬メーカーの社会的な責任が大きくなっていると指摘。「われわれは、GE薬に対する社会の期待と要望に応える責任がある。そのためには、厚生労働省のアクションプログラムなど、様々な課題をクリアしていかなければならないが、現状の企業規模で対応できるかと言えば疑問だ」と述べ、社会的責任を果たすためにも、何らかの業界再編が必至になるとの見方を示した。今回の買収劇は、その一環というわけだ。
実際、今後はGE抗癌剤やバイオ後続品の位置づけが大きくなると見られているが、井上氏は「多くのGE薬メーカーにとって、現状の企業規模、資金力でバイオ後続品の開発ができるかと言えば、答えはノーだと思う。その意味で、業界が過渡期にある今、早い段階で大正薬品が提携に踏み切ったのは英断だった」と述べた。
営業部隊は一体化へ
また、さらなる買収の可能性ついては、「今回も、将来の目指すゴールが両社で合致していた結果で、単なる売上高の数字合わせで行う気はない」との方針を強調。あくまでも企業哲学・文化を含めたビジョンの一致が前提とした。
今後、大正薬品は、興和テバの子会社として事業を進めるが、井上氏は「今のところ、構想として、完全に一体化するつもりはない」と完全子会社化を否定。ただ、興和テバ90人、大正薬品60人のMRを擁する営業体制ついては、「シナジー効果を出すために、なるべく早い機会に、150人体制となる一つの営業部隊を目指したい」と、営業機能を統合していく考えを明らかにした。当面は、大正薬品とのシナジー最大化に向け、最適な事業体制の検討を進めていく方針だ。