癌患者やその家族の多くが、▽経済的な痛み▽こころの痛み▽からだの痛み--の3つの“苦痛”に、悩んでいることが、日本医療政策機構が行った「癌患者意識調査」結果で分かった。7割以上が癌治療費の負担が大きいとし、6割が精神的・肉体的苦痛に苦しんでいた。
調査は、同機構の市民医療協議会が癌関連患者団体の協力を受け、87団体に所属する癌患者・経験者・家族を対象に、昨年11月から12月にかけて実施したもの。回答は1618人から寄せられた。回答者は癌患者・経験者が86%を占め、癌と診断されてから1~15年未満が60%だった。
それによると、癌治療にかかった費用について、「負担が大きい」としたのは71%に達した。年間130万円以上かかった405人では、その比率がさらに高まり、87%が「負担が大きい」と感じていた。
また、全回答者の7%が、経済的な問題から治療を断念したり、最も受けたい治療を諦め、別の治療を選択するなど、何らかの形で治療を変更していた。特に、転移・再発の経験のある回答者では、13%が治療を変更しており、経済的な問題から、治療の中断や変更を余議なくされていることが、改めて浮き彫りになった。
癌治療を通しての悩みで一番多かったのは、「落ち込みや不安、恐怖などの精神的なこと」で64%、次に「痛み・副作用、後遺症などの身体的苦痛」の60%だった。「これからの生き方、生きる意味などに関すること」は52%、「収入、治療費、将来への蓄えなど経済的なこと」が40%と続いた。
癌治療を通しての悩みで身体的苦痛が上位に挙がる一方、痛みを和らげるための“疼痛ケア”を受けた経験の有無については、「疼痛ケアを受けたことがある」は全回答者の17%にとどまり、「受けたことがない」が59%を占めた。
癌の診断や治療方針の決定過程、受けた治療の満足度については、「不満足」「どちらかといえば不満足」と感じた人が、約25%あった。不満足の理由は、▽情報が少ない▽精神面に対するサポートが不十分--などが上位に挙がっている。
診断や治療などの医療技術が徐々に進歩している一方で、精神面に対するサポートや情報に関する事柄など、より質の高い療養生活を送る上で、欠かすことのできない部分の不満が高いことが示された。また、医療スタッフの対応に不満を持つ人も多かった。
がん対策基本法に基づき策定されたがん対策推進基本計画には、全体目標として、癌の死亡者の減少と共に、「全ての癌患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上」が掲げられている。
市民医療協議会では、「がん対策基本法施行から3年が経過し、基本計画の対象期間が残り2年となった今、この3つの“苦痛の軽減”という大きな柱を、より一層充実させていくことが、喫緊の課題」だと指摘している。