参天製薬は、フランスの製薬会社ノバガリファーマを買収した。点眼剤の効果を向上させる同社の製剤技術と、欧州で第III相臨床試験段階にあるドライアイ治療剤「シクロカット」(一般名:シクロスポリン)の入手が主な目的。現地時間の27日に、発行済株式の約50・55%を取得する株式譲渡契約を、同社の株式保有者と結んだ。今後、公開買付を実施し、株式の100%取得を目指す考え。取得価格の総額は約107億円になる見通しだ。
参天製薬が着目したのは、ノバガリファーマが確立した「ノバソーブ」と称される製剤技術。乳化した点眼剤に正電荷を付加できる。眼の表面は負電荷となっており、この技術によって、薬剤の眼表面滞留性と眼内移行性を高められる。薬効の持続時間延長などの効果が見込まれ、新薬開発や既存薬の製剤改良への活用が期待される。
この技術を活用した「シクロカット」の第III相臨床試験が、今春から欧州で始まった。順調に開発が進めば2012年末に承認申請を行える見通し。同剤は、ドライアイ領域では世界的に数少ない臨床後期開発品。現在、欧州市場には医療用医薬品として承認されたドライアイ治療剤は存在しない。同剤は欧州市場初のドライアイ治療剤になる可能性があるという。
同剤を含め臨床開発中のパイプラインは合計4品目。春季カタルを対象にしたシクロスポリンの点眼剤が第III相段階、緑内障を対象にしたラタノプロストの点眼剤が第II相段階、糖尿病黄斑浮腫を対象にしたデキサメタゾンの注射剤が第I相段階にある。
ノバガリファーマは研究開発に特化した製薬会社。00年に設立された。資本金は約1億3650万円、従業員数は43人。上市済みの製品は、ドライアイに関連した一般用医薬品1品目のみで、10年の売上高は約6000万円。営業利益は研究開発が先行し、約8億円の赤字となっている。
参天製薬は、社内的に策定している10年間の長期経営計画で、[1]医療用眼科薬領域でグローバルトップ3に入る[2]現在15%の海外売上比率を21年3月期に40~50%に高める‐‐を目標に掲げている。欧州を含む海外事業の強化や、ドライアイ領域でのパイプライン強化につながる今回の買収は、こうした構想に基づくものだ。