2012年は、初めて6年制薬剤師が誕生した記念すべき年となった。薬剤師にとって100年の悲願とも言うべき6年制薬剤師の誕生は、全ての国民の薬剤師職能への期待の現れと言ってもいいだろう。
6年制の薬学教育を通じて高度な薬学の知識と技能、医療人としての高い倫理観を身につけ、在宅医療、地域医療、創薬など医療に関わる幅広い分野で活躍する薬のスペシャリストの今後の活躍は、大いに注目されるところだ。
「2年間の実務実習によって卒業後の職業観がはっきりしてきたため、就職時にも能動的に職場・職種を選択しており、自ら選択した職域で積極的に取り組んでいる」と、6年制の薬剤師を賞賛する各職場からの声も少なくない。
とはいえ、6年制薬剤師はまだスタート地点に立ったばかりだ。そのスムーズな受け入れと育成には、既存の薬剤師による、環境整備が不可欠なのは言うまでもない。先輩薬剤師諸氏には、改めてその重要性を認識してほしい。
一方、薬業界に目を転じれば、今年4月から医療用医薬品製造販売業公正取引協議会の接待関連行為に対する新運用基準が実施された。
新運用基準の遵守は、プロダクト本来の特徴が処方決定の決め手となるため、期待される新薬創出加算の本格的実施と共に、各製薬企業の画期的な医薬品創出の原動力につながるものと考えられる。
だが、新薬創出については、各社ともにまだ“2010年問題”から脱却しているとは言い難い。創薬の踊り場状態から抜け切れず、苦戦しているのが現状だ。
山中伸弥京都大学教授のノーベル生理学・医学賞受賞が、今年の薬業界で最も明るい話題となった。山中氏がストックホルムでの授賞式後に語った「iPS細胞研究の応用分野は、再生医療よりも創薬の方がはるかに大きい」との指摘は非常に印象深い。
多くの製薬企業は、山中氏のノーベル賞受賞前からiPS細胞を活用した創薬研究に取り組んでいるが、今回の快挙を契機にますます研究に拍車がかかることを切望したい。
また、年末の衆院選挙では、自民・公明が大勝利を得たものの、新政権の社会保障政策や薬業界への影響はまだ具体化されていない。国際社会の中での信頼確立や経済の立て直しと共に、今後、新政権がどのような舵取りをするかしっかりと見守る必要があるだろう。
ダーウィンの進化論は、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」と唱えている。薬剤師や薬業界の生き残りも、どれだけ新しい職能や新薬を作り出せるか、どれだけ変化に対応できるかがキーポイントになると思われる。業界がさらなる発展を遂げていくことを期待したい。