16日に投開票された衆議院選挙は自民党が294議席を獲得し、最大野党から最大与党へと返り咲いた。一方で、2009年総選挙で308議席を獲得し大躍進した民主党は今回54議席と大幅に減らし、現役閣僚8人が落選するなど惨憺たる結果となった。
3年3カ月前に政権与党となった民主党は、国際関係、経済問題、社会保障制度などの重要課題への対応、さらには東日本大震災や、その後の原発問題など次々と迫る課題に、ことごとく後手に回っていた感はあった。そんな政権運営に対する国民の審判が下ったのだろうか。
今回の選挙では、既に本紙でも既報の通り日本薬剤師連盟の推薦候補者は、自民党の松本純、渡嘉敷奈緒美の両候補が小選挙区で当選。民主党では、三井辨雄、逢坂誠二、樋口俊一の3氏は小選挙区・比例区で敗れるなど、所属政党により大きく明暗が分かれた格好となった。
また、当日の投票率は小選挙区59・32%、比例区59・31%と双方で60%を下回るなど戦後最低を記録した。
東日本大震災後初となる政権選択選挙で、震災復興や原発問題、消費税増税問題など争点が多かった。ただ、解散から総選挙までの短期間に12党が乱立し、各政党連携などの動向などに関心が集まった。
選挙前には「国や政治の方向性を決める重要な選挙」とは喧伝されたが、最終的には政権選択のための争点が分散化され抽象的なイメージとなったことは否めない。
今後、重要なことは与党政党の政権運営の中身に注目していくことだろう。細かな話にはなるが、与党となった自民党が選挙前に打ち出した『政権公約』には医療や社会保障制度に関連した内容の中で、薬剤師に関係がある「薬局・医療機関の薬剤師の機能、役割の拡充と積極的活用」を掲げた。
そこでは、国民医療の向上とセルフメディケーション普及のため、医薬分業の一層の推進と地域の薬局・薬剤師の積極的活用を図ると明記。医療機関での薬剤師業務改善や適正配置の推進など従来からの課題に言及。チーム医療での薬剤師業務拡充と医療機関の薬剤師配置の推進、薬剤師卒後研修の制度化を検討。また、安全優先の観点から医薬品のネット販売の安易な規制緩和は行わずスイッチOTCの推進、一般用医薬品の拡充を図ることにも触れている。
これらは薬業界の中の一部の課題ではあるが、一般国民に対する薬剤師職能のアピールとしては、もっとも分かりやすく実践できる部分でもある。
その意味では、選挙で当選した薬剤師議員にはこうした政権公約を十分認識した政治活動を期待したい。