厚生労働省は、新医薬品産業ビジョン(仮称)の原案を公表した。新ビジョンでは、産業の将来像を見直す一方で、継続的イノベーションが必須なことや、医薬品卸の将来像・求められる機能も新たに明示した。また、「革新的医薬品・医療機器創出のための5カ年戦略」を踏まえた5年間の集中的なアクションプランも新たに策定。後発品市場や一般薬の育成、流通機能の効率化・高度化など総合的な内容を盛り込んだ。厚労省は30日の「医薬品産業政策の推進に係る懇談会」で、関係団体から新ビジョンについて広く意見聴取するほか、8月9日までパブリックコメントを募集、国民からの意見も聞く。
5年前に策定した医薬品産業ビジョンは、国際競争力の強化を最大の主眼に、新薬開発力を高める点から、M&Aや提携を視野に入れた戦略を求める一方、治験環境の整備、新薬承認審査のさらなるスピードアップなどの項目をアクションプランとして提示していた。
しかし5年が経過した現在でも、未だ達成されていない点があることや、その後に発足した安倍政権が、経済成長の加速化、イノベーション促進を政策課題に位置づけたことから、5年間の変化を踏まえ、新たな医薬品産業ビジョンを検討すると共に、その具体化のため、政府のとるべき施策のアクションプランも策定した。
新ビジョンは前回の構成を基本的に踏襲し、▽産業の将来像を国際展開の現状を踏まえて見直す▽産業の発展に、継続的イノベーションが必須であることを明確化する▽医薬品卸の将来像を示し、求められる機能を示す””などを新たに盛り込んだのが特徴だ。
産業の将来像については、製薬企業の向かう方向性として、▽メガファーマ▽スペシャリティファーマ▽ベーシックドラッグファーマ▽ジェネリックファーマ▽OTCファーマ””の五つに再分類した。
医薬品卸の将来像については、▽全国を網羅する大規模な流通網を持ち、メーカー系列を脱したフルライン卸で、高度な情報サービスや情報インフラを持つ「統合型」▽特定の地域を商圏としながら、他の地域を商圏とする卸と連携し、グループとして統合型卸に対抗できる機能を備える「連携型」▽後発品などの特定の製品分野や、診療所、薬局の個店など特定のユーザー、特定の地域に特化し、その特徴に合わせた流通網や情報サービスを行う「特化型」▽医薬品の流通業を超えて、水平統合(業態卸)または垂直統合(製造・卸・小売)の主体となる「新規複合型」▽医療保険制度の対象とならない大衆薬等を専門的に取り扱うことで、効率的な事業展開を図る「大衆薬特化型」””に分け、それぞれ求められる機能を提示した。
一方、5年間のアクションプランは、3省で策定した「新5カ年戦略」を基本的に踏襲すると共に、後発品市場の育成、一般用医薬品の育成、流通機能の効率化・高度化も含めた総合的なプランを示した。
中でも、イノベーションに関しては、国際競争力のある市場にすると同時に、医療保険財政の持続可能性を確保するために、特許期間中にリスクとイノベーションに見合うリターンが得られ、かつ特許期間満了後は再審査期間を経た上で、後発医薬品に着実に置き換わる仕組みが必要だとし、今年度中に検討すると明記した。