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新規抗癌剤へのアクセス悪い日本‐生存率の延長で欧米と差

2007年09月11日 (火)

関連検索: 抗癌剤 生存率 スウェーデン  がん

左がカロリンスカ研究所の臨床薬理学研究所長のニルス・ヴィルキング氏、右がストックホルム商科大学教授のベント・イェンセン氏
左がカロリンスカ研究所の臨床薬理学研究所長のニルス・ヴィルキング氏、右がストックホルム商科大学教授のベント・イェンセン氏

 抗癌剤治療で日本の患者には、1995年以前に発売(基準は世界初発売日)された薬剤が、欧米などと比べ2倍以上多用されていることが、スウェーデンの研究者の調査で分かった。研究者は、癌治療では生存率の延長に新薬が貢献しているとして、日本での新薬の導入の遅れに対し問題提起した。

 研究は、医療経済学者でストックホルム商科大学教授のベント・イェンセンとカロリンスカ研究所の臨床薬理学研究所長のニルス・ヴィルキングの両氏が、欧州を中心に米国、日本など25カ国での抗癌剤癌治療薬に対するアクセスを国際比較したもの。欧州癌治療学会誌に掲載された。

 比較は各国の様々な年代に発売された抗癌剤の売上高などで行った。その結果、新しい抗癌剤の売上高が比較的多く、アクセスが良好なのは米国、オーストリア、フランス、スイス。アクセスが悪いのは、ニュージーランド、ポーランド、チェコ共和国、南アフリカ、英国。日本は上市されている新薬も少なく、比較できないケースもあり、欧米と比較するとアクセスが悪かった。

 さらに、人口一人当たりの抗癌剤の売上高(購買力平価換算、05年)を比較すると、日本は平均的な水準にあったが、売上高に占める薬剤をみると、日本は95年以前に販売された薬剤が6割を占めた。これは米国の3倍、世界平均の2倍も多い割合だった。

 00年以降に発売された薬剤が占める割合は、世界平均で2割、米国が3割であるのに対し、日本は1割程度にとどまっていた。

 両氏は7日に都内で会見し、イェンセン氏は、コロンビア大学のフランク・リヒテンバーグ博士の研究から、[1]米国50の癌センターで認められた2年生存率改善の要因のうち、約半分は新しい癌治療薬の使用によるものと考えられる[2]欧州5カ国で5年生存率に差が認められるのは、各国の新薬の普及度の差に起因する‐‐を引用し、新薬が患者の生存率の改善に寄与していることを指摘。「患者は、画期的治療法に均等かつ迅速にアクセスできなければならない」と強調した。

 ウィルキング氏は、日本で新薬導入が遅れる背景の一つとして、新薬が世界で初めて発売されてから、各国で発売されるまでのタイムラグを紹介。米国がほぼゼロから1年程度、欧州が2年以内にであるのに対し、日本では304年かかりっていることを挙げ、開発環境や薬事規制を改善する必要があることを示唆した。

 日本で新薬導入が遅れる背景についてコメントした福岡大学医学部教授の田村和夫氏は、治験実施体制の遅れ、時間がかかる承認審査、企業の開発への取り組みの遅れを挙げた。また、世界的な標準新薬が導入されても、適応症の制限、腫瘍内科医など専門医の決定的な不足や未成熟なチーム医療体制などで、十分な治療を実施できない恐れも指摘した。

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