日本医薬品卸売業連合会会長 鈴木賢

昨年9月4日に厚生労働省により「医薬品産業強化総合戦略」が発表されました。「骨太の方針2015」も踏まえ、「後発医薬品80%時代」においても、▽国民への良質な医薬品の安定供給▽医療費の効率化▽産業の競争力強化――を三位一体で実現するための医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中的な戦略が示されました。
「グローバル展開を見据えた創薬」を目的にしたものですが、医薬品の流通の方向性にも言及されており、改めて私たちが果たさなければならない役割の重要性を実感させられる内容となっています。戦略は示されましたが、魂を入れる取り組みはこれからであり、日本の医療を支える存在の一つとして取り組んでいきたいと思います。
「総合戦略」では、医薬品卸の機能が一定程度評価されている一方で、課題として、「流通のさらなる改善」「環境変化への対応」が挙げられています。
この課題の一つ目は「単品単価交渉のさらなる促進」です。これは現在の公的医療保険制度、薬価制度の前提となることでもあり、流通改善にしても、今後の医薬品卸ビジネスを考えていく上でも単品単価交渉の推進は譲れないものであると考えております。
二つ目の課題は「後発品の使用促進」への対応です。これから後発品80%時代を迎えようとしています。今後も確実に後発品のシェアが伸びていくので、経営へ大きなインパクトを与えると見込まれます。医薬品卸各企業ではさらなる流通の効率化と適切な流通の実現が求められてくる課題です。
三つ目は「市場の変化や社会的要請に対応する流通の確保」です。医薬品流通の大きな変化は続いていきますが、いかなる変化が起ころうとも日本の医療の一翼を担う医薬品卸は、社会の要請に応え続ける責任があります。私たちは、商売の原点を見つめ直し、適正な利益を獲得しながら社会のインフラとして再投資によって洗練されたその機能を提供することで社会へ貢献し続けていきたいと考えています。
さらに、9月1日には流改懇から「医療用医薬品の流通改善の促進について(提言)」も公表されております。これは2007年の緊急提言の公表以降に起こった急激な環境変化を踏まえ、新たに提言として取りまとめられたものです。この中においても単品単価取引に基づく適切な価格形成、薬価制度の安定的運営への協力が求められています。
これら「総合戦略」や流改懇の「新提言」に基づき、制度変更、後発医薬品の使用促進などの環境変化に対応しながら、関係する皆様方と共に流通機能をさらに発展させていきたいと考えております。