最新の病態・薬物治療プログラム提供
新潟薬科大学(新潟市)は、20年にわたる生涯学習の実績が認められ、2008年9月1日に薬剤師認定制度認証機構(CPC)から認証機関(プロバイダー)の認証を受けた。全国に74ある薬学部、薬科大学のうち、プロバイダーの認証を受けているのは10校しかないが、5番目の生涯研修認定単位(シール)発給機関になった。多くの大学が生涯学習に手が回らない状況で、参加者にとって興味のある講座を継続的に提供し続けられるのは、高度薬剤師教育研究センター長を務める若林広行教授の「最新の病態と薬物治療を勉強する場を設けたい」という熱い思いからだ。
新潟薬科大学では、薬学教育6年制と4年制の教育のギャップを埋める目的で、05年に全国の大学に先駆けて「高度薬剤師教育研究センター」を開設。同大学の生涯研修認定制度は、この「高度薬剤師教育研究センター」で企画・運営されている。
講座のテーマや講師の選定は、若林氏を中心とするセンター運営委員会が行っており、選定に当たっては、数十冊にも及ぶ臨床系の最新の雑誌や論文に目を通した上で、講師を選んで「直接電話してお願いする場合もある」という。これだけでも大仕事だが、毎年、継続して講座を提供できるのは、若林氏の中に「病院薬剤師、薬局薬剤師にとって一番の基本は病態と薬物治療の理解で、実務の最新の知識を学べる場を設けたい」との思いが常にあるからだ。
そのため、講座では、「医師に気兼ねをして聞けないような内容をあえて話してほしいと頼んだり、具体的な症例を提示し、なぜ、こういう治療を行ったかを解説してもらうようにしている」という。
講師の大半は医師だが、薬剤師でも、興味深い取り組みを行っていれば、講師として招くこともある。こうした努力もあり、講座は毎回、盛況だ。若林氏は「講座のテーマと講師を誰にするかは本当に真剣に考えないと」と話す。
今月9日には第4回の講座が終了したが、8月27日の第5回講座は、「ロコモティブシンドローム、その概念と最新の予防と治療」をテーマに、佐久間真由美氏(新潟医療福祉大学理学療法学科准教授)が講演する。
第6回(9月10日)は、「アレルギー診療における東洋医学」―津田篤太郎氏(聖路加国際病院リウマチ膠原病センター副医長)、第7回(10月15日)は「七転び八起き、がんサバイバーとして医療者に伝えたいこと」―関原健夫氏(日本対がん協会常務理事)、第8回(11月5日)は「舌下免疫療法とは」―後藤穣氏(日本医科大学多摩永山病院耳鼻咽喉科)、第9回(12月3日)は「薬剤師に知ってほしい生活習慣病と体質」―大門眞氏(弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科教授)を予定している。
生涯教育講座の登録料は、同大学卒業生が1000円、他大学出身者は1万円で、単回受講(1回1500円)も可能だ。
受講登録者600人のうち、同大学出身者が半数を占めるが、残りは他大学を出てから新潟に勤務する薬剤師で、職種も、病院、薬局、製薬企業、卸、保健所など様々だ。
県内には薬剤師会の会員が約1700人、病院薬剤師会の会員が200~300人いるが、生涯研修認定制度にはこれら県内の薬剤師の3分の1強が、毎年受講申し込みをするという。
受講者の中で、さらに興味がある人は、無料でグループ研修にも参加することができる。28年度のテーマは、「臨床症状と疾患」「糖尿病スキルアップセミナー」「フィジカルアセスメント」で、同大学の教授が責任者になっている。
30人限定だが、1講座につき生涯研修認定単位シール1単位が発行される。若林氏は、「ここまで充実したプログラム内容は、ほかにはないのでは」と胸を張る。
また、「都内近郊であれば、生涯学習の研鑽の機会に恵まれているかもしれないが、新潟は少ない。であれば、卒業生であるかどうかを問わず、安価に継続して学ぶ場を提供することは大事」とする。CPCからプロバイダーの認証を受けたのも、過去20年にわたる、こうした実績が認められたからだろう。
最近では、他大学の講座にも参加したいとの要望を踏まえ、プロバイダーになっている同大学と都内のプロバイダーとなっている大学が連携して、どの講座も受講できるようにするだけでなく、共通のシールを発給できるようにする仕組みも検討しているという。
若林氏は、今後も継続して魅力あるプログラムを提供していくため、「現場の人の中に、生涯教育講座の運営に携わってくれるような人がいると、より現場の要望が反映できる」と話す。運営委員に、「病院や薬局の人たちを入れて、実際に問題提起をしてもらい、それをどう解決するかといった内容の研修を行うようにすれば、これまでとは違った生涯学習になるのでは」と考えているからだ。
生涯学習は、毎年、第三者による評価を受けており、県の薬剤師会、病院薬剤師会の関係者が評価メンバーになっていることから、「そうした人たちが運営に携わってくれると、違った内容が組めるのでは」と、アイデアは尽きない。
厚生労働省が、かかりつけ薬剤師、健康サポート薬局の普及を進める中、「シールを集めるだけの勉強は無意味。普段から研鑽していれば、何でも対応できる」と考える若林氏ならではの発想といえよう。
新潟薬科大学 高度薬剤師教育研究センター
http://www.nupals.ac.jp/koudo/