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【肝炎救済】依然として残る難題‐傷つく薬害エイズ被害者

2008年1月18日 (金)

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基本合意書調印式、舛添厚労相は原告代表と笑顔で握手したが、問題解決の第一歩にすぎない
基本合意書調印式、舛添厚労相は原告代表と笑顔で握手したが、問題解決の第一歩にすぎない

 薬害C型肝炎事件被害者を一律に救済する法律が成立、国と被害者の和解に向けた基本合意書も締結となった。被害者側の意向を強く汲んだ内容だ。しかしその裏で、救済対象から外された肝炎感染被害者がいる。あの薬害エイズ被害者もいる。ほとんどが肝炎ウイルスに感染している。なのに、なぜ?これで真の解決といえるのか?また、薬害肝炎事件がクローズアップされる中で、薬害エイズ事件の教訓がかすんできていると受け取られても仕方のない事態も起きている。薬害エイズ被害者は二重にも三重にも傷つくことになる。

■1000/10000

 「一律救済」とは言いながら、血液製剤による感染推定被害者数1万数千人のうち、救済されるのは1000人程度とみられる。カルテなどで血液製剤の投与事実、感染との因果関係が立証できる人が極めて限られると見積もられているためだ。

 それは以前から分かっていた。法案を審議した衆院厚生労働委員会でも立証方法には配慮し、カルテがなくとも「手術記録、投薬指示書等の書面又は医師、看護師、薬剤師等による投与事実の証明又は本人、家族等による記録、証言等も考慮すること」が、決議に盛られる。基本合意書もその方向の内容となった。

 しかし、そんな中で、法案の救済対象者にすらなっていない人たちがいる。あの薬害エイズ被害者ら、血友病など先天性疾患のために血液製剤の投与を受けた人たちだ。薬害肝炎被害者らと同じ血液製剤を投与され、被害に遭っているにもかかわらずだ。法の救済対象者は「後天性疾患」でフィブリノゲン製剤、第IX因子製剤を投与された人に限定されている。

 薬害エイズ被害者は実は、HIVだけでなく、ほとんどがHBV、HCVにも感染している。近年の死亡者の9割は肝炎を悪化させたケースだ。

 法案は、与党だけでなく薬害肝炎原告弁護団も加わる形で練り上げられた。法案づくりの原告弁護団側代表の鈴木利廣弁護士が言う「原告の要求は全て反映された」法案の骨子には、既に「後天性疾患」に限ることが明記されていた。

 実は「後天性疾患」に限ることは、原告・弁護団側が要求したものだ。福田康夫首相が議員立法による救済を表明した翌12月24日の「議員立法に対する原告・弁護団の意見」に書かれている。

 代表の鈴木弁護士は、東京HIV訴訟弁護団の事務局長を務めた人物。薬害エイズ被害者の多くが肝炎ウイルスに感染していることはよく知っている。なのになぜ?

 一つは、救済法案が、薬害肝炎訴訟の解決のためという事情がある。それに同訴訟は、確実に国に勝つために、当初から先天性疾患のために血液製剤の投与を受けていた者は「戦略的」(弁護団)に除いていた。先天性患者を含めると勝つことが難しいと判断したからだ。その姿勢が救済法案づくりでも貫かれた。

 薬害肝炎全国弁護団副代表の山西美明弁護士は、事情を説明する。

 「まず国に勝ち、責任を認めさせた上で、そこから全ての肝炎被害者の治療体制の獲得につなげていくという戦略。血友病の方にもその旨を話した上で訴訟を始めている。一方原告の方には、あなた方は肝炎被害者の代表選手だからと、自分たちだけの問題ではないことを説明してきた」

 薬害肝炎被害者も、救済者が限られる内容であることは認識している。全国原告団山口美智子代表は、「法の成立が全面解決だとは考えていません」と、被告側と対峙していく姿勢は緩めていない。

■唖然とする薬害エイズ被害者

 一方、法案骨子がまとまる少し前から、薬害エイズ被害者らは騒然となっていた。薬害肝炎被害者が救済されることは評価しつつも、憤りの声も上がる。

 「私たちは切り捨てられようとしている。(肝炎弁護団は)私たち血友病患者5000人を敵に回すことになる」。弁護団への抗議文を出そうという動きもあった。

 その声が表に出たのは救済法案が衆議院に提出された7日のこと。血友病など先天性疾患の全国の患者会(薬害エイズ被害者含む)が、両院議長に意見書を提出したからだ。こうある。

 「薬害C型肝炎訴訟の解決を目指すために迅速な成立が期待される法律であるとはいえ、併せて、先天性凝固異常症の患者の存在・尊厳を踏みにじるにも等しい内容の法律」

 「京都ヘモフィリア友の会」の佐野竜介会長(先天性無フィブリノゲン血症患者、HCV感染)は翌8日、参考人として招かれた衆議院厚生労働委員会で、怒りを込めて訴えた。

 「(このままでは)同じ薬を使い被害を受けたわれわれは、この感染を甘んじて受けるべきとされ、薬害ではないと否定されてしまうことになる」

 薬害エイズ被害者の川田龍平参議院議員は、後天性疾患に限るという内容が肝炎訴訟の原告・弁護団の意見と知った時、「政府が言うならまだしも……」と絶句した。

 既に5年前の肝炎訴訟提訴当時から行き違いが生じていた。ある薬害エイズ被害者は、肝炎弁護団が法廷で、“原告は血友病のように代替製剤がない病気と異なり”などと陳述したことに、感染は仕方なかったと言われたと感じ、傍聴の席を立った。「身内に踏み台にされた」と振り返る。訴訟に加われない恨み節を耳にすることも少なくなかったという。

 この法案は、衆院厚生労働委員長提案。本来なら委員会質疑は省略される。にもかかわらず委員会質疑が行われたのは、この問題の大きさに与野党議員が慌てたからだ。15日までの法成立が求められており、修正する時間はなかった。

 先の意見書には、救済すべき責任が国にあることを次のように綴っている。

 「1975年以来、正式な政府の検討会等において、安全な献血による国内自給の実現が繰り返し求められていながら、よりリスクの高い買血プール血漿、あるいは輸入血漿が原料として使用されるなど、不十分な血液事業、血液行政によって(被害が)もたらされた」

 衆参の厚労委は、与党を含めた決議を行い、「先天性の傷病の治療に際して血液製剤を投与されウイルス性肝炎に感染した者への必要な措置について、早急に検討すること」と盛り込んだ。

 参院厚労委では、救済法案の策定に携わった自民党の大村秀章議員が「重大な問題で、議論すべき課題と認識している」。政府側の舛添要一厚生労働相も「無視していいとは思っていない」と、答弁で今後の検討の裏打ちもした。が、検討はこれからの話だ。

 ある薬害エイズ被害者は、「決議でお茶を濁された感じ」と感想を漏らした。

■生かし切れてない薬害エイズの教訓

 その一方で、偶然か否か、薬害エイズ事件の教訓がかすんできていると受け取られても仕方のない事態が進んでいる。それは薬害肝炎問題とも絡む。

 一つは、血液製剤による肝炎感染が問題化した02004年ごろ、そして昨秋、肝炎感染症例リスト418人への告知が問題化した時、省内のしかるべきところで検討されなかったことだ。

 しかるべきところとは「健康危機管理調整会議」。同会議は薬害エイズ事件の原因の一つといわれた担当部局間の連携のなさを克服するために、省内関係部局からの情報を総合し、省を挙げた対策に結びつける場。

 肝炎問題は、薬やメーカーだけでなく、医療機関、医師も巻き込んだ総合的な対策が求められる。同会議は打ってつけだ。

 会議は月2回、定期的に開かれているものの、議題を見る限りでは、02年3月に「非血友病患者の肝炎感染研究班」の報告がなされた以外は、04年までを含め肝炎問題は議題に上っていない。

 誰がどのようにリストの患者に被害の可能性を告知するかで騒いだ「症例リスト問題」で、会議の議題にならなかったのは、大臣主導で事が進んだためという言い分はある。が、会議の事情に詳しい厚労省職員は「議題に取り上げるべきケースだったかもしれません」と、うつむいた。

■血液製剤の国内自給はいつ?

 もう一つは、輸入製剤で起こされた薬害エイズ事件を反省して、取り組むとした血液製剤の国内自給のメドが立っていないことだ。

 厚生労働省は昨年12月27日、2008年度までに国内自給を達成するとしていた目標が、達成できないことを認めた。ただ、それは予想されたこと。

 問題なのは厚労省の姿勢。達成できないのなら、いつまでにどう達成させるかが課題になる。「基本方針」はそういう性格のものだ。しかし同省が同日、薬事・食品衛生審議会血液事業部会に示した次期基本方針の「たたき台」には、国内自給の達成目標時期がどこにも書かれてなかった。

 医薬食品局血液対策課は、「これまでの蓄積から反映できることを整理したもので、反映できなかったところは、今後部会で意見をいただきたいと考えている。まさにたたき台です」(植村展生血液対策企画官)と説明する。

 確かに、現方針に盛られた国内自給の達成目標時期は、97年の「血液行政の在り方に関する懇談会」報告書を受けたもの。これに匹敵する議論は今回なされていない。肝炎問題の対応に追われたのも一因と見られ、急ごしらえの印象が拭えない。

 救いは、部会で、基本方針の背景を踏まえて、達成目標時期は示すべきとの声が複数の委員から上がったことだ。

×  ×  ×  ×  ×

 薬害エイズ事件がもたらした薬事行政への影響は大きい。安全対策の強化にもつながった。しかし、同事件の教訓がかすみつつあるとなれば、薬害の芽が育ち始めているといえるのではないか。

 舛添厚労相は、薬害再発防止策の検討に意欲を見せている。が、薬害肝炎だけから学ぶのでなく、その前に薬害エイズを受けて打ち出された対策が機能しているかなど、土台がしっかりしたものかも見据えて検討しなければ、次なる対策は砂上の楼閣になりかねない。

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