“
キーワードは「やわらかな絆」
東邦薬品は、『調剤薬局版共創未来グループ』の設立に向けて始動した。6月20日には「第1回保険薬局経営者研究会」を都内で開催。元日本薬剤師会会長の佐谷圭一氏が基調講演を行った後、濱田矩男社長が自立薬局のグループ化による事業展開を趣旨とした調剤薬局支援の基本方針と、コスト削減や薬剤師確保などにつながる連携のメリットを説明し、「今こそ保険薬局が力を合わせて取り組むときだ」と訴えた。研究会には東日本の34社が参加したが、年商を合計すると800億円を超える規模に達する。今後、西日本への展開も構想にあるようで、連携の実効性とスピードを図る上で、事業運営会社などの設立も選択肢の一つとして視野に入れている。
薬局版共創未来は、薬局経営で深刻な課題と指摘されている「2010年問題」(薬剤師の確保、診療報酬改定への対応)などの将来的な不安を取り除き、地域で自立して医療と患者に貢献しようとしている薬局を支援することが目的。薬剤師の確保・教育研修と本部のスリム化(管理コスト等削減)に、卸版の共創未来で培ったノウハウと実績を活用して支援する方針だ。
基本方針は、地域の調剤薬局個々では対応困難な、[1]コスト削減による効率向上や将来に向けた投資等の経営支援[2]かかりつけ薬局機能を発揮する患者支援[3]薬剤師の確保・教育研修支援――などについて、資本提携ありきではなく、「グループとして一緒に取り組んでいく」こと。東邦薬品ではそれに対し、全面的に支援する姿勢を打ち出している。
薬局版共創未来に参加する薬局には、[1]採用関連費用の削減や薬剤師の確保が容易になる[2]安定した資金調達が可能になり、新規出店や機能強化に投資できる[3]東邦薬品の在庫管理・発注・配送・分割などのシステムと連携させて在庫効率を向上できるほか、仕入れコストの見直しができる[4]管理部門の生産性を改善して、小さな本社を実現できる[5]地域の医療事情や中核病院の情報などを迅速に把握できる[6]地域連携により店舗の全体最適化が図られ、競争力を強化できる[7]業務支援のために東邦薬品関連の外部機関(不動産会社・弁護士・会計士・社会労務士など)を活用できる――などのメリットがある。
またグループ化により、ジェネリック医薬品の選択やレセコン導入、お薬手帳の活用などについても、スケールメリットが得られると考えられている。
一方、東邦薬品と共創未来グループ企業は、薬局を通じて収集した情報をマーケティングに活用できることや、調剤薬局との取引の安定化が図れることがメリットになる。
独立系を志向する各地の有力薬局経営者の多くは、自らが起業して長年、地域医療に携わってきている。将来も自主性を持って薬局事業を展開したいとの意向は強いようだが、大手チェーンによる傘下への働きかけも激しい状況が見られている。そのため、研究会参加者からは「大手の傘下に入らずに、地域で自主性を発揮して取り組んでいきたいので、このスキームは願ってもない」との声が多かったという。
地域の調剤薬局は、病院の門前ではなく開業医と1対1の関係がほとんどで、大手調剤と異なって競合が少ない点が特徴だ。グループ化により、地域における薬薬連携によって面分業を支え、結果的に患者貢献につながることが期待されている。
今後、保険薬局経営者研究会は9月にも第2回会合を開催するほか、年内には西日本でも研究会を立ち上げる予定だ。
“