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厚生労働省の新型インフルエンザ対策専門家会議(議長:岡部信彦国立感染症研究所感染症情報センター長)は7月30日、インフルエンザ対策の各種ガイドラインのもととなる「基本戦略」を大筋で合意した。基本戦略は、▽患者発生や死亡者の抑制▽医療体制や社会機能の破綻阻止””の二つを目標に掲げ、各フェーズごとの対策の目的や戦略を示している。9月開催予定の次回会合で最終的にまとめる。また、「早期対応戦略ガイドライン」は、基本戦略に沿って年内に改定する方針も決めた。
基本戦略は、新型インフルエンザ対策に関し国が策定した各種ガイドラインの前提となるもので、専門家会議の公衆衛生部門で検討が行われてきた。
会議では同部会から、日本の地理的な条件、交通機関の発達度、受診行動の特徴などに加え、人的被害を最小限に抑え、社会機能への影響を最小限に抑える観点から、▽新型インフルエンザの流行を遅延させ、流行のピークにおける患者発生数および死亡者数を可能な限り抑制する▽医療体制や社会機能の破綻を阻止する””を、基本戦略の目的にすることが提案され、概ね合意を得た。
また会議では、自治体の具体的な対応方針を示すために策定された「新型インフルエンザ発生初期における早期対応戦略ガイドライン」を、見直していくことにした。
ガイドラインの問題点としては、新型インフルエンザ発生後に必要な項目は網羅されているが、「地域封じ込め作戦」の記述が多く、タイトルからも、初期の対応のみに重点を置いているととられる恐れがあることが指摘されている。
具体的な見直し点としては、▽ガイドラインのタイトルそのものの変更▽薬剤や薬剤以外の感染拡大防止策の時系列的記載▽現在不明瞭となっているフェーズ6以降の対策戦略の明確化▽「地域封じ込め作戦」の記載を分離する▽薬剤による感染拡大防止策の細部の検討””などが挙がっている。
基本戦略の概要(案)
【前段階】国外未発生/国内未発生時(フェーズ1、2、3)
[目的]
(1)国際的な連携の下に発生の早期発見に努める
(2)発生に備えて体制の整備を行う
[戦略]
(1)家きんにおける高病原性鳥インフルエンザの防疫対施策を実施する
(2)抗インフルエンザウイルスやプレパンデミックワクチンの備蓄等を行う
(3)医療体制の整備等を行う
【第1段階】国外発生/国内未発生時(フェーズ4A、5A、6A)
[目的]
(1)ウイルスの国内流入をできるだけ阻止する
(2)国内発生に備えて体制の整備を行う
[戦略]
(1)ヒト”ヒト感染発生地への渡航自粛・航空機運航自粛などにより、ウイルス流入のリスクを軽減する
(2)感染地域からの入国者に対し、健康調査・停留等の措置を行う
(3)国内発生に備え、サーベイランス強化・医療体制の整備を図る
(4)プレパンデミックワクチン接種の検討などを行い、接種が適切であると判断した場合には、積極的に接種を勧める
(5)海外発生国における継続的な情報収集および関係機関との情報共有を進める
【第2段階】国内発生早期(フェーズ4B、5B)
[目的]
(1)国内での感染拡大のスピードをできる限り抑える
(2)大規模な感染拡大(フェーズ6B)発生に備えた体制の整備を行う
[戦略]
(1)地域住民全体への予防投薬や人の移動制限を伴う厳格な地域封じ込めの可否を検討する
(2)早期発生例については接触者調査を行った上で、発症者は指定医療機関への隔離および早期の抗ウイルス薬投与を行う
(3)接触者は自宅待機とした上で予防投薬を行い、発症した場合には指定医療機関の受診を勧奨する
(4)発生した地域おいて学校の臨時休業、集会等の自粛、外出の自粛、個人防護の徹底の周知等を実施する
【第3段階】国内での感染拡大期(フェーズ6B)
[目的]
(1)人的被害(感染者数や死者数)を最小限に抑える
(2)第1波の感染者数を最小限に抑えワクチン製造等を進める
(3)医療・社会機能への影響を最小限に抑える
[戦略]
(1)発症者は原則として自宅隔離とし、電話相談などで医療機関受診の必要性を判断する
(2)地域での公衆衛生対策は継続して行う
(3)パンデミックワクチンの開発・製造を積極的に進めていく。安全性・有効性が確認され次第接種を実施する
【第4段階】社会機能回復期(後パンデミック期)
[目的]
(1)大流行後の社会機能を速やかに回復させる
(2)これまで実施した対策について評価を行い、次期流行に備えた対策を実施する
[戦略]
(1)これまでの実施対策を段階的に縮小させる
(2)行動計画やガイドライン等の見直しを行い、必要な対策を実施する
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