薬歴記載時間を可視化‐対人業務の充実に注力
薬局恵比寿ファーマシー(東京都渋谷区)は、糖尿病患者に向けた専門性の高い服薬指導を行う薬局として、40年以上の歴史を有する。2019年にフローラ薬局グループの傘下に入り、これまで培ってきた地域住民との信頼性や糖尿病の専門性に加え、フローラ薬局が茨城県で手がけている漢方薬や生薬の相談にも対応している。健康サポート薬局として認可され、8月から制度が施行される地域連携薬局としても渋谷区に申請している。茨城県でこれまで培ってきた地域医療連携を、東京の中心地でも実現させているのが特徴だ。
同グループは、茨城県を拠点に複数の保険薬局を展開。漢方薬や生薬、アロマオイルなどを数多く取り揃え、中医学に基づいた漢方相談や薬膳、鍼灸治療ができる薬局として、1996年の開局以来、地域住民の健康を長年支えている。水戸市にあるフローラ薬局本店では、薬草ハーブ園を併設し、ハーブを活用した様々な体験イベントも開催している。また、糖尿病患者に対する低血糖や合併症予防のための専門的な服薬指導で豊富な実績を有している。
「茨城で開業以来25年間やってきたことが、恵比寿でも通用することが分かった」と語るのは、同グループの代表取締役で、糖尿病薬物療法認定薬剤師でもある篠原久仁子氏だ。2019年に薬局恵比寿ファーマシーの経営を当時の経営者であった佐竹正子氏から引き継いだ。
業績は好調に推移している。健康サポート薬局の看板の設置や患者との面談用の個室を設置するなど、この1年間で改装費を計上したが、調剤業務に加えて保険外のサービスも伸長し、21年6月期決算は黒字を確保した。薬局恵比寿ファーマシーの処方箋枚数は、月に800~1000枚程度。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う受診控えから一時的に枚数が減少したが、最近は回復基調とのことだ。
篠原氏は、「医療用医薬品の調剤業務も、われわれが扱っている保険外製品の販売も、全て高度な相談力を必要としている」と話す。有名な専門医から診察を受けている患者も多く恵比寿ファーマシーを訪問するが、「あなたの服薬指導が一番分かりやすくて感激した」と言われることも多いという。
災害対策で電子薬歴導入
こうした対人業務で他の薬局との差別化を図っている恵比寿ファーマシーにとっては、計数調剤も含め、効率的かつ正確に対物業務を遂行することが求められている。こうした中で昨年導入したのが、カケハシのクラウド型電子薬歴システム「Musubi(ムスビ)」である。服薬指導と薬歴入力を同時に行うことができ、業務を大幅に効率化させる。
導入の決め手は、ムスビで得られた全てのデータがクラウド上で管理されるということだ。フローラ薬局グループでは、東日本大震災で茨城の薬局が被災し、水害によってハードディスクのデータを失ったという苦い経験がある。グループの全薬局でムスビを導入したのを契機に、従業員の給与計算や出退勤データなど、パソコン上のデータを全てクラウド化し、安全性を担保させた。
災害対策で導入したムスビが、結果的にこのコロナ禍での業務で能力を最大限に発揮している。恵比寿と茨城をクラウドでつなぐことで、移動しなくてもデータを閲覧することが可能だ。オンライン服薬指導にも対応している。「ムスビによって、全店舗の従業員が薬歴記載にどのぐらい時間を割いているかを把握できるようになり、実際に短い時間で記載できるようになった。患者さんの服薬指導を充実させることで、問題を抽出して患者さんに情報提供する時間に充てることができた」と説明する。
さらに、ムスビで薬歴記載時間を把握することで、人事評価にも活用できている。「時間がかかっている業務を洗い出し、教育するツールとしても活用している。ムスビでどれだけ対人業務にシフトでき、服薬指導で患者さんを支援できたかという部分を評価でき、客観的かつ公正な人事制度に生かされている」と篠原氏。
ムスビを活用した人事評価制度によって、篠原氏の後を継ぐ次世代の経営者の育成も視野に入れる。時代の変化にも対応した薬局・薬剤師の価値を創造していくことをグループの中長期的なビジョンとして掲げており、「コロナと同時に時代も変わるが、代表が私から変わったとしても、会社として挑戦し続ける文化を醸成していきたい」と意気込みを語る。次世代にバトンを渡す準備を着々と進めているところだ。
恵比寿ファーマシー(カケハシ)
https://musubi.kakehashi.life/