厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」(座長:矢崎義雄国立病院機構理事長)は、報告書を正式にまとめ公表した。マクロ的には2022年に必要な医師数は供給されるが、短期的・中期的あるいは地域や診療科など、ミクロ的には需要が満たされないと予想されることから、効果的な医師確保対策を不断に講じていくことを求めた。
報告書では医師需給の現状について、▽医師は年間300004000人程度増加しているが、地域別・診療科別の医師偏在は、必ずしも是正の方向にない▽病院は診療所に比べて勤務条件等が厳しく、医師離れが起こって減少しているケースがある――ことを指摘。
さらに、小児科や産婦人科、麻酔科といった特定診療科は医師不足の状況にあり、小児科については他職種との連携や、地域の診療所医師が参加する小児医療提供体制の確立が望まれるとしている。産婦人科については、医療機関が講ずべき当面の対策として、医療機関の集約化・重点化を進めるのに加え、助産師の活用が重要と指摘した。
医師需給の見通しについては、04年の医療施設に従事する医師は25.7万人(病院16.4万人、診療所9.3万人)だが、必要な医師数は26.6万人と推計され、1万人余り足りない計算となる。しかし、40年には医療施設に従事する必要医師数は31.1万人に増加し、マクロ的にはこの医師数が22年に達成できるとの推計値を示した。
しかし、病院の入院需要は40年には現在の約1.4倍になる一方、病院医師数は現在の16.4万人が17.6万人へ、7%程度の増加にとどまると推計し、長期的にみると、病院に大きな負担が生じる可能性があるとした。病院医師の診療時間は、約4割が外来に費やされていることから、病院が入院に特化する必要性も指摘している。
今後の対応としては、[1]地域に必要な医師の確保と調整[2]手術など地域の中核的な医療を担う病院の位置づけ[3]病院で持続的な勤務が可能となる環境の整備[4]病院の生産性向上[5]国民の期待する専門診療と診療科・領域別の医師養成のあり方[6]医学部定員の暫定的な調整――などの課題に取り組む必要性を挙げた。