岐阜大学病院は今月から、日本病院薬剤師会が認定する認定専門薬剤師に資格手当を新たに支給する。専門薬剤師に資格手当が支給されるのは、全国でも初めて。「薬剤師の高い専門性が、病院の医業収益向上に大きく貢献したことを、明確なエビデンスで示した結果」だと伊藤善規薬剤部長。現在、日病薬は専門薬剤師制度を広告可能な制度とするための話し合いを進めているところで、薬剤師の専門性が明確に給与体系に反映させた意義は大きい。
岐阜大病院では資格手当支給について、「病院の機能分担や診療報酬において、専門薬剤師の需要が多大なものとなっている現状を踏まえ、より効果的な病院診療支援の充実および薬剤業務の質の向上を図ることが理由」だと説明している。
資格手当は、日病薬が認定する認定専門薬剤師に限って支給され、1人当たり5000円。この基準に照らして同院で対象となる薬剤師は、がん専門薬剤師2人と感染制御専門薬剤師1人の計3人。
同院では、特に癌化学療法の領域で薬剤師が専門性を発揮。レジメン検討審査委員会の委員長を薬剤師が務め、委員24人中4人を薬剤師占めるほか、抗癌剤の調製件数はほぼ100%を達成。外来癌化学療法室では積極的に薬剤師が患者に説明を実施するなど貢献した。
さらに、昨年4月に外来化学療法に従事する薬剤師を2人増員したところ、医師や看護師の業務量が軽減され、患者数が増加、結果として医業収益が倍増した。薬剤師の増員前後でデータを取ったところ、明らかに増員によって収益が上がっており、こうしたエビデンスが病院側に対する大きな説得材料になった。
「単に資格を持つだけでは通用しない。相応の専門性を発揮し、それを明確なエビデンスとして示していく姿勢が大切」と、エビデンスに基づいた根気強い説得が重要だと伊藤氏は話す。
ただ、今回、資格手当の対象となったのは、日病薬認定の専門薬剤師のみで、他団体が認定する専門薬剤師や日病薬の認定薬剤師は対象になっていない。日病薬の認定薬剤師が対象外となったのは、検討時点で、たまたま同院に認定薬剤師がいなかったためだが、他団体の専門薬剤師については、「あちこちの団体の認定ではなく、どこか一つの団体の認定に統一して対象とすべき」との根強い意見があったようだ。
日病薬によらない専門薬剤師制度としては現在、日本静脈経腸栄養学会によるNST専門薬剤師や、日本糖尿病療養指導士認定機構の糖尿病療養指導士など、いずれも重要なものばかりだ。こうした分野の専門薬剤師の取り扱いが、今後の課題となることが予想される。